タバコ、お酒に代わるものが必要

ところが、今や多くのビルでは屋内禁煙ですし、喫煙率の高い男性の割合も、その男性の喫煙率も減っています。共働きが当たり前の若い世代は仕事が終わればすぐに保育園に子どもを迎えに行かなければなりません。それを無理に飲みに誘えば、パワハラで訴えられる時代です。そもそも、なかなか給料が上がらない中で飲み代にお金を使う気にならないし、部下の飲み代を出してあげられるほど余裕のある上司もめっきり減っています。図表2は酒類への1世帯当たり月平均支出額を世帯主の年齢層別に示したものです。2002年と2018年のデータを比較すると、若い世代ばかりでなく、50歳代という上の世代においても支出額が大きく減っていることがわかります。

タバコの付き合いも酒の付き合いもダメ。けれども、今後、職場の多様性はますます高まり、人間関係を円滑にするためのコミュニケーションの必要性は増すばかりですから、このまま放っておくわけにはいきません。

スウェーデン式井戸端会議「フィーカ」とは

そこで私は令和時代の新しい「飲みにケーション」の方法として「フィーカ」を提案します。「フィーカ」とは、「コーヒー」のスウェーデン語「カッフェ」の前後を(昔の日本の芸能界の業界人みたいに)ひっくり返して出来た言葉で、単にコーヒーを指すのではなく、コーヒーを片手に人々が集まり、リラックスしながら語らうという意味までを含んでいます。また飲み物は必ずコーヒーでなくてはならないということもありません。感覚としては、日本語の「お茶する」に近いと思います。

「フィーカ」は家族や友達との間でも頻繁に行われますが、スウェーデンの「フィーカ」は、主に職場で行われ、まさに人間関係を円滑にするためのコミュニケーションのツールとして確立しているところに大きな特徴があります。日本では、職場でコーヒーを飲むとすれば自分の席で、仕事をしながら、というのが普通だと思いますが、スウェーデンではコーヒーを入れたら、すぐに自席に戻らずに、そこにあるテーブルに腰かけて、その場に居合わせた人たちと少し話すわけです。さすがにあまり長時間に渡って仕事と関係のない話をしていれば叱られるかもしれませんが、社員がリラックスしながら仕事と関係のない話をすることは、職場の環境を向上させ、結果的に仕事の生産性を高めることになる、という考え方が広く浸透しているのです。

日本でも、この「フィーカ」の習慣が広まれば、職場の雰囲気がもっと良くなる会社が増えると思うのですが……いかがでしょう?

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鈴木 賢志(すずき・けんじ)

1992年東京大学法学部卒。英国ウォーリック大学で博士号(PhD)。97年から10年間、ストックホルム商科大学欧州日本研究所勤務。日本と北欧を中心とした比較社会システムを研究する。