10年で職場の人間関係が大幅に悪化

ところが、ISSP(国際社会調査プログラム)の2015年調査によると、「自分の職場では、職場の同僚の関係は良い」と思っている人の割合において、日本は調査対象37カ国中、なんと最下位でした(図表1)。その割合は「非常に良い」「まあ良い」を合わせて69.9%。7割近くが「良い」と言っているならいいんじゃないか、という人もいるかもしれませんが、それは世界的に見れば最低レベルなのです。

実は、以前この割合はもう少し高いものでした。ISSPは働き方に関する調査を1997年と2005年にも行っていますが、両調査とも日本の割合は81.5%と、諸外国の中で目立って高かったわけではありませんが、最下位ではありませんでした。

なぜこのように、職場の人間関係が良いという人の割合が減ったのでしょうか。2005年から2015年という時期における日本の職場の変化といえば、新卒プロパー社員に女性が増え、さらに中途採用者や契約社員、派遣社員、パートタイマーなど、雇用契約上の地位や働き方が多種多様な人々の割合が上昇したことが挙げられます。つまりこのような多様性の増加が、職場の人間関係に影響を与えていると考えられます。

多様性の時代に追いつかない日本の職場

もちろん、多様性の増加=悪ではありません。そもそも日本以上に職場の多様性が高い国はたくさんありますが、それらの国々の方が日本よりも職場で良い人間関係を築いているわけです。肝心なのは、従来の日本の職場におけるコミュニケーション方法が、多様性の増加という今の時代に必ずしも合っていないということです。

職場におけるコミュニケーションには、仕事に直接関わる連絡や会議の他に、仕事に直接関わらない井戸端会議的な情報交換があります。前者が仕事に不可欠なのは言うまでもありませんが、実は職場の人間関係を円滑にしたり、通常の個々の仕事の枠の中では得られなかった気づきを得たりする上で、後者のコミュニケーションもかなり重要な役割を果たします。

そして従来の日本の職場において、後者のコミュニケーションは、様々な部署の人々が行き交うタバコ部屋や、アフターファイブの酒の付き合い、すなわち「飲みにケーション」を通じて行われてきました。