3年で数百億規模の支出が必要

政府の「就職氷河期世代支援プログラム」のメニューはじつに多彩だ。ハローワークに専門窓口を設置し、職業訓練や求人開拓のチームを設ける、正社員雇用に役立つための資格取得のプログラム、社会人インターンシップの実施と助成金による採用支援など、幅広いメニューを用意している。

報道によると支援の柱になるのは成功報酬型の民間委託だそうだ。民間の教育機関が非正規雇用者に専門知識などの訓練や職業実習を半年程度実施したら、経費の一部として国が最大20万円を支給する。さらに受講者が訓練を始めてから8カ月以内に正社員になり、半年間勤務していれば最大40万円を支給する。

また、短期資格取得コースも新設。厚生労働省が民間の業界団体に委託し、希望者に1カ月程度の集中訓練を実施する。たとえば建設業であれば小型クレーン車やフォークリフトの資格、運輸業であれば運行管理者や整備管理者などの資格を想定しているという。こうした支援に必要なお金は3年間で数百億円規模を想定している。その財源は働いている人や事業主が支払う雇用保険から支出することにしている。

政府が氷河期世代を支援する本当の理由

そもそも政府がなぜ就職氷河期世代の支援に乗り出したのか。最初に政府の経済財政諮問会議が提起し、閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019」(6月21日)に氷河期世代の対策が盛り込まれた。基本方針では「人口減少や少子高齢化の急速な進展は、我が国の経済が直面する最大の壁となっている」という認識を示し、「内需の喚起に資する所得の向上を図り、成長と分配の好循環を継続・拡大させるため、経済成長率の引き上げや生産性の底上げを図りつつ、就職氷河期世代の人々への支援を行うとともに最低賃金の上昇を実現する」としている。

いわゆるアベノミクスによる経済活性化の一つの担い手として氷河期世代を当てにしている節もうかがえる。それを何となくにおわせているのが今回の政策のベースとなる「厚生労働省就職氷河期世代活躍支援プラン」である。対策の柱として都道府県ごとで構成するプラットフォームをつくることにしているが、その構成メンバーに都道府県、市町村、経済団体などと並んで「人手不足業界団体」が登場する。