“余ったら貯める”でいいのか
では、多くの方が気になっている「いかに貯蓄を増やすか」ですが、ここでよく言われるのがどう貯めるのかといった「貯め方」です。しかし、上記式からも明らかなように、貯蓄を増やすには、コインの裏側とも言える支出の管理、つまり支出をいかに削るかも同じ効果があることに、気づいていただけると思います。
例えば、20万円の手取り収入があったとしましょう。このとき5万円を貯めようとして、実際に貯められれば、5万円の貯蓄実績となり、裏を返せば15万円使った、ということになります。
一方で、支出を14万円以内に抑えようとして、それが実際にできたとすれば、やはり裏を返せば6万円の貯蓄ができた、ということになるわけです。
「確かに、理屈は分かるけれども、家計管理として“余ったら貯める”というのは良くないのではないでしょうか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
鋭いご指摘です。いわゆる「先取り貯蓄」の有効性ですね。
先取り貯蓄とは、収入から貯蓄を先に取っておいて、残りのお金でやりくりして支出管理をすることが、貯蓄形成には非常に大事とされるもので、式で表すと、
(ちなみに、先ほどの「収入-支出=貯蓄」は、シンプルに“お金の流れ”を捉えた場合の式として表しており、適切な“お金の管理”を前提とした式を表しているわけではありません)
先取り貯蓄の意外な盲点とは
ところが、です。これでOKな方はいいのですが、先取り貯蓄は残念ながら万能ではないのです。意外と少なくないのが、先取り貯蓄をしておきながら、残りのお金でやりくりできていないケースです。
例えば、給与から天引きされる財形で積み立てを行っている、あるいは、生命保険を活用して積み立て貯蓄をしている等、きちんと先取り貯蓄を行っていたとしても、結局は(財形も生命保険も容易に取り崩せないので)別の預貯金を取り崩しながら生活している、という方はめずらしくありません。
これは、手持ちの預貯金を引き出して、財形なり、生命保険に預け替えをしているようなものですから、単に貯蓄の種類が変わっているだけ、という現象に陥っています。この場合、結局「支出」を見直さなければ、貯蓄形成にはつながりません。
でもですよ、もし支出管理がしっかりできていたとすれば、貯め方は財形だろうと、生命保険だろうと、もっといえば何も積み立てを行っていないとしても、手法の種類に関係なくお金は貯まります。
つまり、冒頭に戻りますが、お金の扱い方で大事なのは、「貯め方」よりも、圧倒的に「使い方」なのです。貯め方が大事ではないと言っているワケではなく、両者を比較すれば、より大事なのは使い方だということです。