年金額を把握し、働き方を考える

センセーショナルに取り上げられたが、報告書の内容は無責任でも、不安を煽るものでもなく、現実に即した、意味あるものだと思う。将来を見通して、働き方(収入)や資産形成について考える機会にして欲しい。

まず考えてみたいのは、年金でどの程度、お金が不足しそうかである。「ねんきん定期便」で年金の見込み額を把握して、ざっくりでもいからイメージしてみよう(ねんきん定期便の見方は、「公的年金だけでは老後破綻は本当か。30代、40代の年金額は結局どのくらいか」を参照)。

また老後の生活費として準備したい額は「年金で足りない額×老後の期間」で計算される。「老後」の期間が長いほど必要額は多くなるので、長く働いて、老後の期間を短くする、ということも考えたい。65歳とは言わず、70歳、75歳まで働くことを視野に入れるといい。

仮に年金では月5万円足りないという人なら、月5万円の収入を得ればそれで生活費はカバーできる。たくさん稼ぐ必要はなく、週2日働く、午前中だけ働くなど、無理なく働くだけでも十分だ。できれば今から準備して、自分の得意なこと、好きなことで収入を得ることを目指すのが理想的だ。

さらに、ある程度の額を稼ぐことができれば、年金の繰り下げも選択肢に入ってくる。1カ月繰り下げれば0.7%増額され、70歳から受け取ることにすれば(5年繰り下げ)、42%も年金額が増える。

じぶん年金はお得な制度を使う

街頭インタビューなどで、「老後資金なんて用意できるわけない」と嘆く会社員を見たりもしたが、「多少は用意できているのでは……?」と聞いてみたい。多くの会社員には企業年金があり、退職金として受け取るにせよ、年金として受け取るにせよ、それが老後資金になる。

自身での準備は、少しずつでもいいから早く、そして、税メリットのある制度を使う、ことが重要だ。拠出額(積み立てる額)が全額所得控除されて所得税や住民税が軽減される「個人型確定拠出年金(iDeCo)」をフル活用したい。

また、運用益が非課税になる「つみたてNISA」の利用も考えよう。

老後について悲観する必要はないし、漠然とした不安を抱えていても意味がない。自分の場合はどうなのか、を正しく認識して、計画的に準備したい。長く働くスキルを身に付ける、税優遇を受けながら資金を作るなど、早くはじめるほど、老後の暮らし方の選択肢が広がるはずだ。真実を見極めて、行動しよう。

構成=高橋晴美 写真=iStock.com