年金「100年安心」の本当の意味は

報告書をめぐって、年金について「100年安心」という言葉も度々報じられた。これについては少々誤解があるようなので、正しいことを知っておきたい。

100年安心とは「今後100年、年金制度が維持できるようにする」、という意味である。

年金は現役世代や高齢者を支える相互扶助の仕組みであり、少子高齢化では、少ない人数で多くの高齢者を支えることになる。給付を維持するため、財政検証をもとに、年金制度改革が行われてきた。

2004年の年金改正では、「マクロ経済スライド」が導入された。年金額は賃金や物価が上昇すると増える仕組みになっているが、年金額の伸びを調整し、賃金や物価が上昇するほどには年金額を増やさないよう、抑制するものである。

また現役世代の保険料負担が重くなり過ぎないよう、保険料水準の上限を法律で定める改正も行われ、2017年度で年金保険料は上限に達している。

これらの措置により、保険料収入などの財源の範囲内で給付を行いつつ、長期的に年金の財政を安定化させる。それが「100年安心」の意味するところであり、年金があれば老後も安心、という意味ではないのだ。

そもそも、すでにリタイアした世代の人たちが、年金があれば老後も安心、という環境かといえば、そんなことはない。年金だけで暮らしている人もいるにはいるが、資産を取り崩して生活している人も多く、年金があれば安泰、という意識がある人は少ないだろう。