日本は“他人の子育ては他人事”

北欧諸国の人々が子育てを政府や地方自治体に任せていることをもって、かの国々では親子が断絶している、家族の絆が希薄だ、などという批判の声を日本でたまに耳にしますが、それは誤解です。このランキングと同じ調査の中に「子どもの成長を見守ることは、人生の最大の喜びである」という考えについてどう思うか、という質問がありますが、この考えに同意する人の割合は、日本よりもスウェーデンの方が高いのです。実際、かの国では父親も母親もたっぷりと育児休暇を取得しているし、さらに夏休みをまるまる1カ月連続で取って、その間ずっと一緒に過ごしている家族が少なくありません。

彼らがそれでも「子育ては政府や地方自治体が担うべき」と考える理由は、まさに「子どもは社会で育てる」と考えているからに他なりません。もちろんそのような考えを持っている人は日本にもいると思います。けれども、南青山のケースを例に挙げるまでもなく、児童相談所や保育施設が迷惑施設として扱われ、建設反対運動が盛り上がる姿を見るにつけ、日本では他人の子育てはあくまで他人事なのだな、という思いを強くせざるを得ません。

介護でも同じことが起きている

このことは、介護についても同様です。日本で「高齢者の介護は、主に政府が担うべきだ」と思う人の割合は48.3%と、子育てに比べれば政府を頼りにしている人の割合は高いのですが、図表2に示すとおり、日本の順位は25カ国中25番目と、国際的に見るとかなり控えめな数値であることがわかります。

子育てにしても介護にしても、家族がともに助け合って生きるというのは、言うまでもなく非常に麗しい家族の姿であると思います。けれども、それを維持しようと家族の誰かに過度な負担がかかったり、家族の中で何か問題が起こったりすると、救いようがなくなります。

親は子どもと血がつながっていても、それによって子どもの心が読めるわけではありません。子どもにとって親は特別な存在ですが、だからといって子育てが最も上手であるとは限りません。スウェーデンには「両親学級」という、出産を控えたカップルを対象とした子育てセミナーがあるのですが、そこに私が参加して最も心に残ったのは「自分の子どもが好きになれない親もいるから、子どもが生まれたときにあなたがそうなってもショックを受けないで」という先生の言葉でした。