5月29日、パワハラ防止法が成立し、セクハラ規制の強化策も盛り込まれた。企業のセクハラへの姿勢は年々厳しくなっている。処罰実例や、研修内容など、人事や法務担当者に取材した。
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セクハラ規制“法改正のポイント”4つ

セクハラ事件は後を絶たないが、経営者を巻き込んだセクハラ事件が大きな話題になっている。龍角散の社長が起こしたセクハラについて法務担当部長が社内調査を開始したところ、社長はセクハラ被害をねつ造したとして部長を解雇。6月6日、元法務担当部長の50代の女性が不当解雇であるとして地位の確認と解雇後の賃金などの支払いを求める訴訟を東京地裁に起こした。

裁判の行方が注目されるが、折しも5月29日、国内では初のパワハラ防止法が国会で成立。同時に新たにセクシュアルハラスメント(セクハラ)規制の強化策を盛り込んだ法改正が行われた。

セクハラに関しては「男女雇用機会均等法」に企業に雇用管理上必要な防止措置を義務づける規定がある。今回の法改正によって新たに盛り込まれたセクハラ規制は以下の4つだ。

1.セクハラに関する国、事業主・労働者の責務の明確化
2.事業主に相談した労働者への不利益取り扱いの禁止
3.自社の労働者が他社の労働者にセクハラを行った場合の協力
4.紛争調停への職場の同僚の出頭・聴取対象者の拡大

相談者への不利益な扱いも禁止

1番目は、罰則はないが、セクハラをしてはいけないことが初めて法律に書き込まれた。また、これまでは企業に防止義務を課していたが「他の労働者に対する言動に注意を払うことなどを関係者の責務」とし、関係者とは上司、部下、同僚や取引先の社員も含み、企業以外の関係者もセクハラをしないことを責務とする規定を盛り込んだ。もちろん経営トップもその中に入る。

2番目は、会社にセクハラ相談をした労働者に対する不利益な取り扱いを禁止したことだ。もし不利益な取り扱いをした場合、措置義務違反として都道府県労働局から助言、指導、勧告を受け、それでも従わない場合は企業名が公表されることになる。

ちなみに龍角散の事件では社長のセクハラを目撃し、相談した女性執行役員が左遷されたと一部のメディアで報じられている。もし事実であれば措置義務違反となる。

目撃者を出頭させることも可能に

3番目は自社の労働者が他社の労働者からセクハラを受けた場合は、事実確認などの協力を要請できることにした。今回の改正では「被害者の企業から事実確認などの協力の要請があれば、それに応じることに努めなければならない」とする努力義務が課せられた。

企業間をまたぐセクハラにも解決の道が開かれたが、努力義務なので加害者企業は事実確認を拒否することもできる。だが、1番目に指摘したようにセクハラをしないことは自社の社員だけではなく、取引先の社員の責務と規定している。都道府県労働局に相談すれば、加害者企業に「協力に応じるように努めるという趣旨を説明し、協力してくださいという何らかの指導があり得る」(厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課)という。

4番目は、セクハラ被害者が相談しても会社側が無視したり、意に反する対応をした場合、都道府県労働局長による紛争解決援助や紛争調停委員会の調停を受けられる。

実際にはセクハラ事実で意見が分かれることもある。そのため今回の改正では、職場の同僚などに参考人として出頭を求め、意見聴取ができるようになった。セクハラの現場に目撃者がいて証言が得られれば被害者に有利となる。