自分が選んだ道を“正しく”すればいい

そうして走りだしたものの、起業後の1~2年間は大きな葛藤があったと振り返る。研究を加速させたくて会社をつくったが、研究以外の実務も多い。研究とビジネス、両方中途半端になるのではと恐れもあった。

そんな折、相談に行った先輩研究者に言われた言葉が忘れられない。「『自分が選んだ道が正しいかではなく、自分が選んだ道を正しくしていくように努力すべきだ』と言われて、迷いが消えました。研究と事業を切り離し、メリハリをつけられるように」

起業して5年。バイオベンチャーのユーグレナのグループ会社になり、ビジネスの拡大に一歩踏み込んだ。2018年からは新社屋に移り、これまで20人以下だったチームが、一気に200人も一緒に働く仲間が増えたため、さまざまな刺激を受けている。特に一部上場企業の経営や議論を見られるのは勉強になるという。18年は個人のブログも開始した。実名で情報発信すると新たにビジネスの提案も入りチャンスも増える。

「BtoB(企業間取引)のデータを使った製薬会社の研究支援など、国内初の成功事例を考えています」

このように抱負を語る高橋さんの表情にもう迷いはなかった。

【好きな本】
宇宙の扉をノックする』リサ・ランドール著/NHK出版
【定番の朝食】
小松菜、セロリ、バナナ、豆乳のスムージー
【尊敬する人】
アメリカの理論物理学者、リサ・ランドール氏。学者として、とても大きな影響を受けている。
【ハマっていること】
食事のKPI(カロリー)管理

撮影=枦木 功