価値尺度、交換可能、貯蔵可能がお金の機能
これからのお金について考える前に、まず、お金とはどういう機能、役割を持つものだったのかを振り返ってみましょう。
紀元前、自分の欲しいものを得るために人々は物物交換をしていましたが、物同士の交換では、往々にして、お互いの希望どおりにならないことがありました。そこで、①価値の尺度になるもの(みんなが欲しがるもので、価値がある程度定まっていて、ほかのものの価値を測るのに便利なもの)、②交換できるもの、③貯蔵できるもの、という3つの機能を果たすものを交換のなかだちとして使ったのがお金の始まり。
中国の殷周(いんしゅう)時代の貝はよく知られた例です。貝は当時、貴重なもので、貝殻何個で何々と交換、という統一の測り方ができ、しかも貯めることもできたからです。現在でも「費」や「貯」などお金に関係のある言葉が貝偏なのはこのためなんですね。ドイツ軍の戦争捕虜収容所では定期的に配給されるタバコが、ほかのものとの交換手段として流通していました。
紙幣やコインは先ほど挙げた3つの機能を持つ交換手段として優れているため、現在まで長らく貨幣として使われています。
ところが、テクノロジーが進展するなかで、情報技術と金融が結びつき、さまざまな革新的な動きが出てきた。これがフィンテックです。フィンテックは、インターネット、スマートフォン、AIなどを利用した金融サービスの形で世界中に広がっています。フィンテックにより、消費者の利便性は向上し、さらに、その技術を導入するコストも大幅に低下したため、スマートフォンでの決済など、現金を使わない決済が大変なスピードで拡大しています。
電子的な決済を伴うeコマースとそのデータを使ったマーケティングなど、民間企業が競争しながら、さまざまな付加価値の高いサービスを提供するようになってきています。
海外の先進的な例では、中国のアリペイやスウェーデンのSwishなどがあります。お年玉や、ストリートライブなどでの「投げ銭」が、スマホのアプリで支払い可能に。
スウェーデンではまた、「eクローナ」というデジタル通貨を中央銀行が発行する予定で、これは世界でも先進的な試みです。
日本でもLINE、オリガミなどが、フィンテックを利用した、瞬時に簡単にお金をやりとりできる、決済サービスを次々と提供しています。