異性に求める外見レベルが急上昇

【Cさん】若者の恋愛離れのもう一つの原因として、インスタグラムがあることで、異性の外見に求めるハードルが上がったというのもあると思います。

【原田】どういうこと?

【Cさん】きっと昔の外見の基準って、比較対象がほぼ学校内やクラス内だけで決まっていたと思うんです。例えば、あの子はクラスで3番目の外見だ、など。逆に言えば、たった40人のクラスで3番目の外見にランキングされたら、かなり上位の外見だと判断されたわけです。だから、自分の容姿がクラスの中でそこそこにランキングされたら、大した容姿でなくても恋人ができたと思うんです。

でも今は、インスタグラムでかわいい女の子やかっこいい男の子をいくらでも検索できるようになったから、インスタが男女の容姿の評価基準になってしまっているんだと思います。実際に私の彼氏も、インスタグラマーの女子を見て「カラコン入れないの?」とか「ヒール履きなよ」とか言ってきます。

【原田】インスタによって若者の目が肥えたから若者が恋愛から離れた説(笑)。

なるほど。僕の中学生時代は宮沢りえと一色紗英が男子から大変人気があったのだけど、そのレベルの美女は学校を見渡しても全くいないので、彼女たちと学校の女子を比較する、なんて発想自体がなかった。恐らく女子側だってそうだったでしょう。学校を見渡しても吉田栄作みたいなスタイルや顔の小さな男子はいなかった。

テレビに出ているTVスターとわれわれ庶民の間には大きな差があると誰もが認識していたんだと思う。ところがSNSが出てきて、インフルエンサーと呼ばれる「ちょうど良い存在」が登場した。TVスターほど高嶺の花ではないし、クラスの子たちよりかはちょっとかわいかったり、かっこよかったりする。こうしたちょうど良い存在であるインフルエンサーは、ちょうど良いがゆえに、ついクラスの異性と比較してしまう。そして、同じクラスのあの子も、カラコンを入れたらあのインフルエンサーに追いつけるのになあ、なんて自然と思ってしまう。こんなプロセスで、今の若者の目が結果的に肥えてしまった、ということだね。僕も長らく若者研究をしてきて思うけれど、今の若者の審美眼の平均値は確実に上がってきていると思いますよ。

【Cさん】そうです。「私の彼氏ってブサイクなんだよね」って言う女友達に写真を見せてもらうと、普通にかっこよかったりすることが多くて。誰と比較しているのかを聞いてみたら、インスタグラマーってことが本当によくあるんです。

【原田】インフルエンサーたちは本当に手が届きそうな人が多いから、「あれぐらいのレベルの人となら付き合えるだろう」という気持ちになっちゃう若者が多いのかな。

20歳の誕生日がすごい!

【Eさん】インフルエンサーの影響でデートスポットの基準も上がっていると思います。「インスタグラマーの○○ちゃんは、クリスマスにこんな所に連れて行ってもらってこんなことを言われている」とか「ホワイトデーにこんなサプライズをしてもらっている」といった情報がたくさん入ってきますから。

【原田】SNSがない時代は友達から直接聞くか、あとは雑誌からの情報だったかな。今は他の人のデート情報がSNSを通して大量に入ってきてしまう。中でもインフルエンサーという自分よりちょっとだけ上で、目指せる程度の存在からの情報が大きい。雑誌に比べると大変リアリティのある情報がよく目に入るようになっているわけだね。「私、彼にあまりいい扱いを受けてないじゃん」っていうのが可視化されやすくなっていますね。

【Eさん】だから、SNSの情報によって相手に対して不満を感じやすくなっているんだと思います。

【Aさん】費用もかかるようになっていますよね。インスタグラムを見ていると、豪華なデートをしている人が多い。インスタに載せるようなデートは、豪華なものが多いと言うこともできるかもしれませんが。でも「自分たちもそういうところに行かなくちゃ」ってついつい思ってしまう。

【Cさん】二十歳の誕生日がみんなすごいんですよ。ホテルの部屋を借りて風船で飾って、ブランドもののデパコス(デパートコスメ)をたくさん並べて……。みんなそんな豪華なことやってるの!? って驚いちゃうし、自分もやらなくちゃ、って思わされる。

【原田】昔は一部のパーティーピープルやセレブリティがやっていたことを、今はみんながやらなくてはいけない雰囲気になってしまっている。かつてはデートの食事が吉野家で、でも「愛があれば幸せ」って、反町隆史と鶴田真由はドラマで演じていたけど、今はあの名シーンは撮れないかもしれないね。