“自分へのごほうび”が最悪な理由

人には「確証バイアス」という心の傾向があります。これは自分の意見や考えに合うものだけを受け入れたがるという心理で、自分の考えや行動に自信がない場合、それを補強してくれる考えや意見を探しがちになるということをあらわしています。「これ、良いよね」と言って周りの友達に同意を求めたがるのもそういう行為です。でも「自分へのご褒美」は確証バイアスよりももっとタチが悪いのです。なぜなら他人の意見による補強ではなく、自分自身による「行動の自己正当化」「因果関係のねつ造」だからです。

欲しいものがあれば買えばいいし、食べたいものがあれば食べればいいのです。別にそれに理由づけをしたり、正当化したりする必要は何もありません。ところが、「本当にこんな高いものを買っちゃってどうしよう!」とか、「あー、せっかくダイエットしていたのについパフェを食べちゃった」という後ろめたい気持ちがあるから「自分へのごほうび」という言葉でごまかそうとするのです。でもこれはとても危険です。なぜなら「自分へのごほうび」ということにして、正当化してしまうと、それは単に言い訳をしているだけで、そこに反省も対策も出てこないからです。なにしろ「自分へのごほうび」というのはオールマイティのカードですから、これを切り続けると際限なく無駄遣いが続くことになってしまいかねません。だからこの言葉は最悪なのです。

無駄な失敗経験も大事

一般的には衝動買いや食べ過ぎるのを防ぐには行動習慣でルール化するのが一番良い方法だと言われています。例えば買い物や食事についてはできる限り計画的にやるとか、無目的にウインドーショッピング等に出かけないことが大切だとはよく言われることです。

でもそれでは生活がつまらないですよね。たまにはパーッと買い物したりおおいに食べたりしてストレスを発散したいものです。ですからあまり窮屈に考え過ぎない方が良いと思います。そういう失敗を深刻に考え過ぎるから「自分へのごほうび」としてごまかし、正当化してしまうことになるのです。でもそれを続ける限り、いつまで経っても同じ失敗を繰り返してしまうでしょう。大事なことは、うっかり無駄遣いやルール破りをしてしまってもあまり深刻な気持ちにならないことです。「あ、やっちゃった、まあいいか」というおおらかな気持ちでいればいいのです。人間であれば誰でも衝動買いはやっちゃうし、そういう無駄な失敗経験も重ねることは大事です。

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