節約中の衝動買い、ダイエット中の衝動食い……。誰にも心当たりがあるのではないでしょうか。あとで後悔するのに、なぜ、私たちは同じことを繰り返してしまうのか、行動経済学の視点で解説します。

選択には不安と後悔がつきまとう

人が生きていく上では、毎日が「選択」の連続です。上は就職や結婚といった人生における一大事から今日のお昼は何を食べようかというレベルまで、人生に「選択」は常につきまといます。一般的に女性は男性と違って「何かを選ぶ」ということを好む傾向があるようです。多くの男性は選ぶこと自体がストレスであるのに対して、女性は選ぶことが楽しいという人が多いのです。ところがやっかいなことに、この「選択」には常に不安と後悔がつきまといます。例えば買い物において「赤いセーターを買っちゃったけど、やっぱりあの青い方が良かったかなあ」とか、「もう一軒見てから決めた方が良かったんじゃないかしら」といった具合です。

もちろんそれも含めてあれこれ選ぶのは楽しいのでしょう。ところが一方では、そういった不安や後悔を無くそうと、無意識のうちに自分が選んだことを正当化しようという気持ちが出てきます。「今日はいつもより安かったからこれを買ったの」とか「電気代が安いのが一番だからこの機種を選んだのだわ」といった具合に選んだ理由を探そうとします。

“無料”の罠

ところがこの「選ぶ理由」を探そうとする中にいくつもの罠が待ち構えているのです。中でも割と陥りがちなのが「無料だからお得」という罠です。「あと〇〇円買えば送料無料」とか、「2000円以上お買い上げで駐車場無料」といった言葉に引き込まれて、つい、余分な買い物をしてしまうことがありませんか? こうした無料サービスに多くの人が魅力を感じるのは、「無料だからお得だ」と単純に勘違いしてしまうこともあるでしょうが、実は「選択で損をしたくない」という気持ちが大きく作用しているような気がします。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Kritchanut)

先程も言いましたが、何かを選んで買う場合、買わなかったものの中にもっと良いものがあったのではないかという不安があります。ところが無料の場合はそういう不安はありません。なにしろ“無料”だからです。金銭的な出費がないため、どれを選んだとしても損はないと考えるのです。ところが安心して無料でもらったり、サービスを受けたりしているうちに、つい余計なものを買ってしまうことはしばしばあることです。仮にそんなことはしなかったとしても、無料だからと言ってあまり必要のないサービスを受けることは時間の無駄です。

人間は一般的に何か行動を起こすときには因果関係と理由づけを求めるものです。「~だからこうなった」という因果関係がないと、どこか気持ち悪いと感じる傾向があります。さらに自分の行動や判断が絡んでくると「理由づけ」を求めたがるのです。「無料だから」というのもそうした行動の理由づけの一つです。でも数ある「理由づけ」の中でも最もタチが悪いのが「がんばった自分へのごほうび」という言葉です。