「楽しんだ自分」と「ダメな自分」のはざまで
この言葉は誰もがよく使います。何かを衝動買いしてしまったとか、あるいはダイエット中にもかかわらずおいしいスイーツをいっぱい食べてしまったというケースでしばしば使われます。「これは最近、仕事を頑張っているのだからそれに対するご褒美だ」と自分で自分を納得させる、あるいはまわりの人に言い訳する時によく使われるフレーズと言っていいでしょう。SNS等を見ていると、こういうコメントや書き込みは頻繁に出てきます。言わばごく日常的に使われている言葉ですが、どうしてこれが最もタチが悪いのでしょう。
本来、モノを買ったりおいしいものを食べたりしたいと思うのは人間の自然な欲求です。場合によっては衝動買いをしたり、ダイエット中にもかかわらず突然たまらなく甘いものが食べたくなってケーキを2個も食べてしまったりする、こういうことは人間だれしもあることです。行動経済学では多くの人がそうだと考えます。1年先のスリムな姿を想像して食べるのを我慢するよりも、目の前にあるショートケーキに対する魅力のほうがはるかに大きいのは当然でしょう。したがってたまには衝動買いや食べ過ぎてしまうのはしょうがないのです。
ところが何も理由がないのに、あるいは何も因果関係がないにもかかわらずそういう行動(衝動買いや衝動食い)をしてしまうと、後ろめたい気持ちになってしまいます。そこで「これはがんばった自分へのごほうび」という理由づけをおこなうのです。この心理は「認知的不協和の解消」といって、「楽しんだ自分」と「自制心のないダメな自分」という矛盾や心の痛みを解消するために理由をこじつけてしまうのです。