介護業界は月10万円、賃金が低いという現実

そして今回の受け入れでも前出の労組幹部は「従来と変わらない人数になる可能性がある」と語る。

「技能実習生のときよりも日本に来て欲しいという事業者は多いが、他の業種に比べて魅力があるのか疑問だ。3年の実務経験があると介護福祉士の受験資格を得、取得すると更新期限なしの在留資格を得られる魅力はある。しかし賃金については、日本人と同等以上にすることになっていても、無資格のままだと、多くの事業者が法定最低賃金と連動させているので、外食業や宿泊業など賃金の高い他の業種よりも水準は低くなる。そうなると、出稼ぎ感覚で来る人には介護を選んでもらえない可能性が高くなる」

賃金について政府は「同一業務に従事する日本人と同等以上」とするが、介護業界は他産業に比べて月額10万円差があると言われるなど賃金競争力は低い。加えて今回の法改正による介護業の受け入れ策は他の業種に比べてハードルも高い。すべての業種に共通する日本語能力テストに加えて「介護日本語評価試験」と「介護技能評価試験」をクリアする必要もある。介護の仕事に携わる以上、認知症高齢者など心を閉ざしている人の気持ちを受け止めてお世話をする高度の対応も求められる。

人材不足で施設をオープンできず

介護職員1万人以上を擁する大手介護施設運営会社は現在外国人の受け入れの準備を進めている。同社の部長はこう語る。

「首都圏では老人ホームに入りたくても入れない待機高齢者も多く、施設を建設してもスタッフが揃わないとオープンできない状況にある。今後の人手不足を想定し、外国人の手を借りたいという思いがある。ただし、言語や生活習慣の違いもあり、ハードルは高い。しかも入国前に賃金の高い他の業界に流れる可能性があり、どれだけ確保できるのかわからないのが現状だ」

他の業種に比べて日本語能力などのハードルが高いうえに賃金も安いとなれば、外食など他の業種を希望する外国人が多くなるかもしれない。結局、高齢社会を支える介護人材を外国人で補おうとしても、外国人から見向きもされない可能性もある。

2023年に不足する介護人材30万人を女性と外国人で本当に確保できるのか。もし計画通りにいかなければ、その家族にしわ寄せがいくことになる。

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