高齢者と女性をアテにする政府の皮算用

つまり高齢者と女性で22万人の介護人材を確保し、介護ロボットやICT(情報通信技術)の活用で2万人分に当たる生産性を向上させ、外国人の6万人を足して30万人を確保できると試算しているのだ。いくら元気な高齢者が多いといっても介護現場の主力になり得るとは思えない。そうなると女性に介護現場で働いてもらうことが政府の本当の狙いのようだ。

しかし、出産・育児で離職した女性が再就職先として介護職を選ぶ人がどれだけいるのだろうか。ましてや3K(きつい、危険、汚い)職場と言われ、給与が低い介護職に就こうとする女性が増えるとも思えない。

介護職を選ぶ外国人材確保も難しい

それだけではない。6万人の外国人材すらも確保するのは難しいという声も挙がっている。介護労働者の労働組合である日本介護クラフトユニオンの幹部はこう指摘する。

「介護業界では受け入れたい企業とそうでない企業の二つに完全に分かれている。介護の質を重視し、職場環境を整備しながら日本人に選んでもらえる会社にしたい経営者もいる一方で規模拡大を推進する企業の中には積極的に外国人を雇用したいと考えている。また多くの中小零細事業者は受け入れにはコストと手間がかかるので採りたくても難しいと考えている」

じつは日本ではこれまでにも外国人の介護人材の受け入れを進めてきたが、それほど多くない。介護分野の受け入れでは2008年にEPA(経済連携協定)でインドネシア、フィリピン、ベトナムの3国から約4300人が来日した。日本で介護福祉士の資格を取得すれば更新期限なしの在留資格を得られるが、在留期限の4年間に資格試験に合格した人は約700人。しかもその中には母国に帰った人もいるという。

また、2017年11月から技能実習の介護の受け入れが始まったが、政府は初年度5000人を見込んでいたが、18年10月末時点でわずかに247人にすぎない。さらに介護福祉士資格者は専門的・技術的分野の在留資格に入っているが、18年6月末時点で177人にすぎない。全部合計しても1000人前後と少ないのが実態だ。