言葉を選ばず、実名で書いていく
自分の失敗や会社で苛立つことがあると、ノートに書き続けてきた。その名も〈イライラノート〉である。
「私、すごい“イラち”なんですよ」
そう朗らかにいう横尾千亜紀さんの実家には、なんと歴代100冊の(秘)ノートがたまっている。
「最初は気持ちがスカッとするので始めたけれど、やめられなくなったのは理由があるんです。後から読み返すと、自分の何がダメだったのか、これが足りなかったせいなんだということもわかる。ノートに書くことで、自分の課題も整理されるんですよね」
もともと20歳のとき、高校時代の友人に勧められたのがきっかけだ。最初は職場の愚痴や上司に怒られたことなど、毎日イライラしたことを書きなぐるだけだった。イライラの相手は実名もズバリ書き込む。「だから、絶対人には見せられなくて。私にもしものことがあったときは、友人が処分してくれることになっています」と苦笑するが、だんだんノートの役割も変わっていった。
「まだ一般職だったころは、『もっとまともな仕事させろ』とか、『こんなに頑張っているのになぜ報われない……』といった愚痴が多かったですね。あるとき、上司の出張の手配をしてホテルを取り違える失敗をして、出張先から怒りの電話がかかってきたことがあったんですよ。あとでノートを振り返ってみると、仕事にランク付けをして『もっとまともな仕事をさせろ』と不満を持ちながら業務についていたことに気づくわけです。でも本当は、コピー取りにしても、出張の手配にしても、きちんとこなさなければ困る人がいる。当時はそんなこともわかっていなかったんです」
今年のイライラは今年のうちに解消する
ノートの役割が大きく変わってきたのは20代の終わり、転職先のベルリッツで課長に昇進した頃からだ。当時全国で50店舗だったランゲージセンターを100店舗まで増やすミッションを与えられた横尾さんは、店舗開発プロジェクトを立ち上げ、メンバーの採用・育成や目標管理を担った。
その責任は重く、管理職になっていろいろ本を読んだり、さまざまな人から学ぶ機会が増えていく。〈イライラノート〉にも、なぜ自分がイライラしたのか、相手の言動も振り返り、気づいたことや課題を書き加えるようになった。
「友だちともルールを決めたんです。いつまでも同じイライラを言い続けないこと。年内に解決して、翌年には引きずらないと……」