海外の学会に母親を同伴する先輩育児社員も
根っからの“リケジョ”である小嶋さんだが、研究に邁進し国内外の学会に頻繁に出席するステージから、業務全体を俯瞰するマネジャー的なステージに移行しようと決意する。
「夜遅くまで研究する生活はもうできないし、最先端技術を学べる海外の学会に当分行けそうもありません。子供の面倒を見てもらうために親の旅行費用を自分で出して、海外の学会に一家で参加する先輩社員もいるそうですが。研究結果を自分で出したい欲もありますが、それはある程度若手に任せたほうがいい。出産と子育てによって、私は私で、会社でやるべきことがあるはずだとリセットできました」
復帰後は朝8時45分に仕事を始め、午後4時30分に仕事を終える。保育園に子供を迎えに行き、買い物をして、夕飯を作って食べ、子供を寝かしつけて夜10時にはフリーになる。12時ごろまで論文を読もうとするが、疲れがたまって、子供と一緒に寝落ちすることも多い。
職場復帰後、こういう生活と時短勤務から“居場所がない”と感じることもあった。しかしすぐに技術開発のリーダーを任されることになる。その上司からのオファーも「子供が小さいからやれないよね?」でなく、「どうする?」と小嶋さんに判断を託された。そして第二子を妊娠。去年の12月から2度目の産休と育休を迎えた。自分自身が妹に助けられたということもあり、やはり兄弟はいたほうがいいと思っているし、40歳手前というタイミングもある。夫がいくら協力的であっても、子供を産むことは女性にしかできないのだ。
2度目の育休は気楽に構えて
「でも一度経験したので、今回はあまり不安がありません。2度目の育休明けにも、またなんらかの仕事があるだろうと楽観視しています。同じグループに、5歳年下の後輩がいて、先に出産しているので、彼女とはお互いに助け合いながら仕事をしています。部署全体としては程よいサポートをしてくれています。『どうぞ休んで!』という感じだと、自分なんかいなくてもいいのかなと思っちゃいますが、そうでもなく。『また、休むの?』という冷たい視線で見られることもない。いい塩梅です(笑)」
研究者の場合、全国転勤をするMRと比べると転勤の問題はそれほどない。子育て中の女性ラインマネジャーもいるが、人数はまだまだ少ない。
育休明けの女性社員には、職場復帰後の働き方について上司と話し合うための面談シートを準備するなどしてサポート。その上司には、性別を問わない育児休職への対応など、多様なマネジメントについたハンドブックを配布している。“子育て”は当事者だけが抱えることではなく、部署や会社全体の課題だとの意識が高まっている。
そのなかで、小嶋さんは、きっと次世代の女性たちのロールモデルになるはずだ。
撮影=アラタケンジ