ただ、オルビスに来た当初は、社風の違いに戸惑ったという。
「化粧品会社だからなのか、男性社員は繊細でおとなしい人が多いなぁと。前の職場で日常的に飛び交っていた“強い言葉”は封印して、気をつけているつもりなんですけど……」と言いかけて、彼女はちょっと照れくさそうに笑う。「ちゃんと優しくできているかは、自分ではわかりませんけどね」
前職での経験を活かし、難事業をやりとげる
オルビスに転職したのは2004年、36歳のときだ。受注業務部に配属され、顧客の注文を処理するフロアを指揮した。
着任日の朝、9時に出社すると、机には注文データの用紙が山積みになり、約40人のパートタイム従業員がデータを入力する音が、間断なく響き渡っていた。
「彼女たちの仕事の速さは、目を見張るものがありました」と丸山さんは振り返る。まず気を配ったのは、リーダー格の女性との関係を丁寧に深めていくことだった。
「大勢の従業員が働いていると、相性のよくない人もでてきます。不穏な気配を感じたら、リーダーに一人一人の個性や状況を聞いて、すぐ対応するようにしました。全員が働きやすい職場づくりを常に考えていた当時の経験は、今でも役立っています」
その後、丸山さんは流通センター統合プロジェクトの一員に選ばれ、3年がかりで倉庫の再編をやりとげた。100人を超えるパート従業員たちへの説明には細心の注意を払い、大きなトラブルもなく乗り切った。
また、近年の「宅配クライシス問題」(通販の増加による宅配会社の人員不足)への対応も任され、大口の取引先であるヤマト運輸や日本郵便との交渉を紅一点で担当している。
「運賃の値上げを求められたときは、交渉のシナリオを作るたびに彼女に意見を求めました」と話すのは、直属の上司(SCM推進部部長)である小川洋之さん。
「彼女はこちら側の意見をすべて押し通そうとするのではなく、『それは言いすぎだと思います』と長期的な関係性も考慮しつつ、落としどころを探ってくれるのですが、その判断が的確で非常に頼りになった。難しい交渉でしたが、結果的に合意に至ったのは彼女の力あってこそです」
以前、ヤマトグループで働いていた経験が大いに役立ったのだ。