転職は3度目。慣れない化粧品業界のカルチャーに最初は戸惑ったが、大規模な倉庫統合をやりとげ、運送会社との価格交渉に貢献した。「男社会」の物流業界とベンチャーで鍛えた彼女のパワーの源とは。
丸山三千代●オルビス SCM推進部 課長。1968年東京都生まれ。専門学校卒業後、ヤマトシステム開発、法律事務所、ベンチャー企業に勤務後、2004年に入社。受注業務部を経て08年より物流チーム(現SCM推進部)。10年より現職。

「強い言葉」は封印。現場で慕われるあねご肌のリーダー

埼玉県加須(かぞ)市。周囲に田園風景が広がる「騎西(きさい)流通センター」は、延べ床面積1万2623坪の巨大倉庫だ。化粧品メーカーのオルビスがここに「東日本流通センター」を開設したのは6年前。当時、関東3カ所にあった流通拠点を、西宮(兵庫)と加須の2カ所に再編・統合した。丸山三千代さんは、その再編プロジェクトの主要メンバー。統合後も月に2度は訪れる。

「ここに来たら、パートの方々となるべく多くコミュニケーションを取るようにしているんです」

LEDの照明がまぶしいほどに明るいフロアでは、この日もパートタイムの従業員が商品のピッキング作業を行っていた。

「本社のコールセンターでは、お客さまから箱詰めの仕方や緩衝材についてご要望をいただくことも多いんです。その声にすぐ対応するには、『同梱(どうこん)すると商品が傷つきやすくなる組み合わせは?』『この商品のセットには、緩衝材がいくつ必要?』といった課題を共有することが何よりも大事。意見を求めることは、現場で働く人のモチベーションになるし、いつも現場を見ているよ、というメッセージにもなると思うんです」

丸山さんは同社で働き始める前に、3つの職場を経験している。ヤマト運輸グループのシステム開発会社、法律事務所、そして知人の誘いでカードの決済事業を行うベンチャー企業に立ち上げから参加した。

「営業から人事、総務、経理といった管理部署の仕組み作りまで、何でも屋のように働きました。最初の会社では受け身だったので、働くことに対する意識が大きく変わりましたね。苦しかったけれど、ベンチャーのおかげで仕事や人に対する度胸がつきました」

流通センターで「あねご肌」と言われて親しまれる丸山さんの原点は、ここにあるのだろう。