「60代、70代になっても体が元気なうちは、自分で自分をまかないながら生きていきたい。まずは、働こうという気持ちがあることが大事。収入だけでなく、社会とつながることが、生きる力になっていくはず」

定年後、どんな仕事ができるのか、という点も気になるポイントだが、「現役時代ほど稼げなくてもいいし、無理や我慢をするより自分が楽しい、好きだと思える仕事を優先したほうが絶対いい」と阿部さん。

周囲にも、カルチャースクールで絵を習っていたのをきっかけに絵画教室でパート講師をする、出版社を早期退職して保育園で保育士補助をするなど、自分が楽しみながら働く人が多いという。老後は社会の役に立ちたいというなら、シルバー人材センターで子育てや家事、着付けなど自分の趣味やスキルを活かすのも方法だ。

「定年後の人生を楽しく働くためにも、現役時代の今からどんなことをしたいのか、自己分析しておくことが大切ですね。そこがはっきりすれば、会社で働きながら必要な資格や人脈づくりなどを準備できます。それだけで気持ちに余裕が生まれて、老後の仕事選びが変わってくると思いますよ」

阿部絢子(あべ・あやこ)
薬剤師・生活研究家
家事、生活全般に関わる執筆活動などのかたわら薬剤師として働く。著書に『65歳で月収4万円。年金をもらいながらちょこっと稼ぐコツ』(KADOKAWA)、『ひとり暮らしのシンプル家事』(海竜社)など。
 

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