新卒で入社してすぐ、大阪支社に配属になった菊竹倫子さん。13年後に東京へ転勤し、全国の販売戦略を推進する部署へ異動。同時期に入籍し、大阪で働く夫とは別居婚がスタートした。新たな仕事についたが、妊娠が判明し、翌年4月に娘を出産。育休後に職場へ復帰したが、ほぼ1人での仕事との両立で、たちまち行き詰まってしまった。

TOTO 人財本部 ダイバーシティ推進グループ グループリーダー 菊竹倫子さん

「福岡出身なので親や親戚も傍にいないし、孤独な子育てでした。保育園からベビーカーを押しながら、“何でこんなにうまくいかないんだろう”と泣きながら帰ることも」

このままでは子育ても会社も中途半端……もんもんと悩んだ末、「もう仕事を辞める」と夫に話すと、「ママ1人で悩まなくてええやん」と予期せぬ返事。自分もがんばるし、周りの人にも手伝ってもらおう、と思い直した。

「自分で全部やらなければと抱えていたけれど、できない時はそう言えばいいと思えたのです」と菊竹さん。

夫がファミリーサポートなどを調べてくれ、頼もしい保育ママ(自宅で子どもを預かる保育者)に出会えた。上司に相談すると、利用できる社内制度を調べてくれた。子連れでの出張にも挑戦した。

40代を前に、上司に「今年は一歩前に出ます!」と宣言。全国規模のプロジェクトを任され、4年後、福岡本社へ転勤になり、がむしゃらに働いて3年目に管理職に昇進した。子育てする部下には「1人で何もかも抱えこまないで」と声をかける。1つ守っているのは毎日の娘のお弁当作り。残さず食べてくれるのは、「ママ、ありがとう」のメッセージと受けとめている。