「なぜこう思う?」を掘り下げる

データからニーズを読み取るポイントは、「まず目標を具体化し、数値化すること」と松浦さん。「たとえば、売り上げを2%上げるプランと、10%上げるプランでは戦略が変わってきます。目標を達成するためには、売り上げを構成する4要素のどれを何%アップする必要があるのか、具体化していくことでとるべきアクションが見えてきます」

(左)アイデアはすぐにスマホでシェア 外出中に商品棚を見て気づいたこと、いいアイデアなどが思い浮かんだら、チームのメンバーに「今度話そう」などとメールしておく。(右)[パンパースの肌へのいちばん]シリーズ “最高級おむつ”として2012年に登場したパンパースの新ブランド。トラブルが起きやすい赤ちゃんへの「最高級の肌へのやさしさ」をうたった。

次に大事なことが、「仮説を持つ」ということだ。「仮説を持つためには、他の商品カテゴリーを見たり、他業界で何がはやっているのかを考えたり、さまざまなところにアンテナを張って自分の引き出しを増やしておくことです」

数字が苦手という人は、「数字が持つ意味をとらえることが大事」と松浦さん。数字の裏を読む力は、鍛えることも可能だという。「当社では、部下に目的を与え、それについて提案を出させるコーチングを行っています。提案を受けた上司は、『なぜこう思うの?』と、現象ではなく原因にたどり着くまでどんどん掘り下げて聞いていく。そうすることで考え方のプロセスが鍛えられ、自分で正しいポイントを見つけられるようになっていきます」

新商品の裏には必ず戦略的意図がある。「CMなども、『誰に何をどう売りたいのかな?』と考えながら見るとトレーニングになりますね」

▼売れる商品の3カ条
1:データを見るのは目標・目的を具体的に数値化してから
2:「購入者数」「頻度」「個数」「購入価格」のうちどれを伸ばすか考える
3:経験や日常的にとっている情報から仮説を立てる
松浦香織
P&Gジャパン執行役員 ブランドマネジメント兼ベビーケア
2002年の入社以来、一貫してブランド構築に従事。パンテーン、パンパースなど数々の商品を手がける。

撮影=米田真也