たとえばテーブルの真ん中にメニューをおいて、相手が身を乗り出して、のぞきこめるようにする。「この写真を見て」とスマホを出してもよいでしょう。そのときには、相手との間にあるナプキンホルダーやパソコン、資料などをよけ、物理的に距離を近づけるようにしましょう。

基本的にどんな人でも自分の話を聞いてほしい

写真=iStock.com/itakayuki

そして、可能なら相手に触ります。タッチングです。「同じだね」と握手をしたり、「ほら、そうだったじゃない?」と相手の腕に触れたりすると、自然と距離が縮まります。いずれも大切なのは、話す内容ではなく、どの位置に座って聞くか、どんな顔をして聞くか、どんな姿勢で聞くかといった、非言語・ノンバーバル表現なのです。

聞き方には、もうひとつコツがあります。それは聞き役に徹するということです。

基本的にどんな人でも自分の話を聞いてほしいという欲求があります。その欲求に応えましょう。そのためには、目上の人なら「最近はいかがですか?」、目下の人なら「調子はどう?」といった、答えが限定されないオープンクエスチョンで雑談の中身に入ることがおすすめです。「最近も仕事忙しい?」というようなクローズドクエスチョンだと、YES・NOという答えのみで会話は終わってしまいます。

オープンクエスチョンなら、たいていの人は自分からとりとめもない話を始めます。もしかすると「仕事はうまくいっているんですけれども、彼とけんかして……」など、プライベートな話が出てくるかもしれません。そのときは相手がプライベートな話をしたいとき。受けとめてあげましょう。

何げない雑談でも、こうした自分らしい表現を入れながら私プレゼンをしていくと、あなたの存在感を印象づけることができるでしょう。

矢野 香
スピーチコンサルタント
長崎大学准教授。NHKキャスター歴17年。心理学の見地から「他者からの評価を高めるスピーチ」を研究し博士号取得。政治家、経営者やビジネスパーソンに信頼を勝ち取るスピーチやコミュニケーションを伝授。著書に『最高の話し方』(KADOKAWA)など。

構成=池田純子 イラスト=アヤコオチ 写真=iStock.com