仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、100冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、今回は「雑談力」に関するご相談です。
雑談をするのが苦手です。特に、同じ会社のよく知らない人とエレベーターホールで一緒になったりした時に何を話せばよいか分からず、気まずさからその場を離れてしまうこともしょっちゅうです。感じが悪い人と思われているのではないかという点も心配です。どうしたら、苦も無く雑談をできるようになりますか。
社会的マナーを感じさせる振る舞いとは
【河崎環さんの回答】
雑談って、しなきゃならぬものですかねぇ? だいたい、興味の湧かない、接点もない相手に何を話せというのか。鉄板と言われる天候の話でも「暑いですねぇ」と持ちかけて「そうですねぇ、夏ですからねぇ」なんて返されようものなら、その後の沈黙の間じゅう自分の発言を後悔し続けて死にそうになりますよね。
雑談に限らず、会話とはキャッチボール。ある程度の長さのキャッチボールを成立させるためには「そもそも自分がキャッチボールしようと思う相手か(自分の意欲)」「それに応じてくれる相手か(相手の意欲)」「お互いに手持ちのコンテンツがあるか(球の存在と投球のスキル)」が必要になってきます。だからまずは自分が相手に興味を持たねばいけないわけで、他人にあまり興味を持たないタイプの人が「雑談しなきゃ」とコミュ力修行みたいな会話を始めると、話しかけられた側はあなたの「苦」がわかるものなのですよ、「一生懸命だな……」と。
ですから、せめて「私はあなたに敵意があったり、嫌いだから話をしなかったりするわけではないのです」ということの表現として、見知っている人に会ったらにっこりはっきり明るく挨拶(あるいは微笑み会釈)をすれば、十分に社会的マナーを守れていると考えましょう。そして、そういう自分のコミュニケーションに「社会人として押さえるべき最低限のことは押さえている!」と自信を持って堂々としていましょう。
すると、相手から雑談を始めてくれるかもしれません。そうしたら相手のイニシアチブに乗って返事をすればいい。会話って、興味もないのに自分から始める必要はないし、きっかけと興味さえあれば始まるものなのです。多分、あなたの「雑談って苦手……」という苦しさや必死さが周囲にも伝わっているのが、雑談がしにくい原因。ノリだけで空虚な会話ばかり得意な、如才のないタイプになれとは言いませんから、「自分から話を持ちかけることはしないのですが、そちらからお話いただければいつでも応じます」と、あなたが一段階だけ柔らかい雰囲気をまとうことで、密室の空気は相当軽くなると思いますよ。
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。