「必ず最初にその人の夢を聞くことにしている」

まずは、一人一人に「好きな店に連れて行って」と声をかけて個別にリラックスして話す時間をとり、相手を知ることから始めた。

「必ず最初にその人の夢を聞くことにしているんです。お客さまにありがとうと言われたい人もいれば、お金を貯めてブランドバッグを買いたい人もいる。女性には仕事をする理由があります。それぞれの夢を、仕事を通して何らかの形でかなえてあげることを大事にしています」

ちょうど会社が一般職の女性の活躍機会を広げようと、窓口対応だけでなく外回りでの顧客開拓なども経験させることを推進し始めたとき。部下たちにきちんとその必要性や面白みを説明。そして担当支店の顧客属性を分析すると、男性の富裕層が多いことに気づいた。

「私は何か課題があると、動く前にとにかく分析して考え続けるんです。そのときも考えていくと、そうした男性富裕層の奥さまやお子さまたちが相続対策に悩みを持っていることがわかり、部下には家族の話を聞いて、ご希望に沿ったものを提案するようにアドバイスしたのです」

すると、契約が次々決まり始め、営業成績は全国トップクラスに躍り出た。課として何度も債券や保険の大会で表彰されることになった。

しかし、不況でこれまで顧客に株を勧めてきた会社が赤字決済に陥り、顧客にも影響が続いた時期には、みんなの顔がどんどん暗くなっていったという。

「そのときはつらかったです。みんなが苦労しているからこそ、私が率先して動く姿を見せないといけないと思い、顧客の損失の手続きなどを全員の担当分を一手に引き受け、週末や深夜まで取り組んだこともありました。アインシュタインの言葉にもありますが、まずは自分でやってみること、それがまた自分の学びにもなっていくことは、管理職になってからさらにかみしめています」

経験を重ねた今でも、顧客となる企業の経営者たちはあらゆる難局を乗り越えてきただけに人を見る目は厳しい。ゆえに、顧客について学び、分析し、期待以上の成果で応えられるよう準備をしている。