「考え中」は斜め上を見るといい

そもそも、なぜ相手がなかなか口を開かずに黙っているのか? たいていは「次は何を言おうかな」「どういう返事をしようか」と次のことを考えていることが多いものです。ですから、反対にこちらが黙って相手を待たせる場合でも、考え中であることを示せば、相手はあなたの言葉が見つかるまで自然に待ってくれます。では考え中を示す非言語・ノンバーバルとは、どういうものでしょうか。その基本形は、ズバリ“斜め上を見る”です。右斜め上でも左斜め上でもかまいません。突然ですが、質問です。あなたは一昨日の朝食に何を食べましたか? 今、答えを考えるとき、右斜め上を見ましたか? 左斜め上を見ましたか? どちらでも問題なく、右か左か。それが考え中のあなたがよくする表現です。長めに黙って間をとりたいときは、この右か左かのあなたの非言語・ノンバーバル表現を取り入れましょう。

イラスト=アヤコオチ

このときの悪い癖は、ガクンと首を下げて、下を向いてしまうこと。困ってもいないのに、考えるときに下を向く癖は、意外に女性に多く見られます。困っているように見えたり、自信がなさそうに見えたりするので、なるべく上を向いて考える癖に変えたほうがよいでしょう。こうした下を向いている人に対して“Chin up”=「あごを上げて」という英語の掛け声もありますね。「元気を出して!」「頑張って!」という意味の言葉です。それだけ下を向いているとネガティブに見えるということです。さらに、女性にぜひおすすめなのが、この考え中のしぐさについてお気に入りを決めること。あごに手を添えるとか、こめかみに指を当てるとか、女性らしいポーズを意図的に取り入れることができます。ドラマの女優や雑誌のモデルなどのポージングを研究し、これはというものをまねしてはいかがでしょうか。自分のお気に入りを決めてしまえば、こちらが考え中であることが相手に伝わり、堂々と間をとることができます。こうしてまずは間を恐れず、間をとることに慣れていきましょう。そのうえで間を戦略的に使っていくのです。

矢野 香
スピーチコンサルタント、長崎大学准教授。NHKキャスター歴17年。心理学の見地から「他者からの評価を高めるスピーチ」を研究し、博士号取得。政治家、経営者からビジネスパーソンまで幅広い層に信頼を勝ち取る正統派のスピーチやコミュニケーションを伝授。

構成=池田純子 イラスト=アヤコオチ 写真=iStock.com