女性オペレーターの、ダンプ姿にあこがれて

「私は普通科だったし、親族にも建設・土木関係の仕事をしている人はいなくて、全く未知の世界でした。普通免許も持っていなかったし。でも、やりたいことが明確にあったわけでもないので、『とりあえず』という気持ちで就職試験を受けてみたんです」

(上)工事の進み具合を確認。長期の現場になると、他社の重機オペレーターとも親しくなる。(下)自分の名前が貼ってある重機は大切な相棒。不具合を自分で調整することも。

水谷建設に興味を持ったのは、就職活動の過程で、一回り年上の女性オペレーターがダンプを運転する映像を見せてもらったからだ。それは以前、同社が取材を受けたテレビ番組で、颯爽(さっそう)とダンプを乗りこなす姿に「カッコいい!」とあこがれた。

初めて重機に乗ったのは、入社後の研修中のこと。車両系建設機械の資格を取るための講習で、小型のバックホウを操作した。

「レバーを上げ下げして土を掘り起こす作業でしたが、ガンダムを操縦しているみたいで面白かったですよ」と彼女は振り返る。

「ただ、福島県にある研修センターでの日々は、厳しかったです。挨拶の仕方とか時間厳守とか、ごく基本的なことなのですが、5分前行動に少しでも遅れると怒鳴られて。それがほぼ毎日です(笑)。この会社でやっていけるかな、現場にちゃんと溶け込めるかな、と心配ばかりしていました」

最初に配属されたのは、北海道のダム建設現場。その広さに圧倒され、「これからここで働くんだ」と身が引き締まったが、不安もあった。

「ダムの建設現場なんて見たこともないし、北海道も初めてでしたから。でも、重機の前に立ってみて驚きました。ダンプやバックホウが家みたいに大きくて、研修で使っていたものの5倍くらいあるんですよ。それを見上げて、『これを私が動かすんだ』と思うと、ワクワクしてきたんです」

初仕事で担当したのは、主に土地を転圧するローラー車。最初はまっすぐに走らせるだけでも一苦労だったが、慣れてくると、自分の手で重機を操作するのが面白くなっていった。

「現場で一緒になるのは、父親と同じぐらいの年齢の人が多いんです。最初は戸惑いましたが、かえって新人の私を娘のように見てくれたのか、仕事を丁寧に教えてもらえたのがうれしかったです。先輩の女性オペレーターにも指導を受けながら、だんだんと現場に馴染んでいきました」