生理用品担当者なのに生理が止まる
2012年まで在籍したP&G入社の日、同期を前に「私が一番に出世するから」と言い放った。他の同期は4月から3カ月間、サンフランシスコで生活を楽しみながら語学研修。ところが、外大出身で留学経験もある野上さんは英語が話せるので1日から仕事。
「めちゃくちゃ悔しくて宣戦布告しました(笑)」
やる気十分。でも、その前のめりが失敗の伏線になるとは。
4年目に同期一番で管理職に昇進。部下2人、売り上げの小さな洗剤のブランドマネジャーだったが、うれしかった。1年後、今度は主要ブランド「ウィスパー」のマネジャーに。部下は5人に増えた。部下は以前からウィスパーを担当し、ビジネスがよくわかっている。
あろうことか、「私の存在意義を知らしめねば」と部下の仕事すべてを管理する動きに出た。部下が出る会議にはすべて出席。もちろん自分の実務もある。朝の9時から仕事を始め夜の7時、8時、9時と延長しても時間が足りない。さらに10時、11時、12時と延びるが終わらない。「これは朝早く来るしかない」と、今度は出社が8時、7時と早くなる。
「ついには始発から終電までという恐ろしい仕事時間になってしまいました。生理が止まってしまい、研究開発の担当者から『新製品の試作品ができたから使ってみて』と言われても使えません」
働けど働けど成果は出ない。もがく日々が続く中、ふと仕事のできる女性上司を見ると部下に仕事を任せている。「なぜそんなに任せられるのですか?」と尋ねると、「だって、みんな賢いやん」。
その一言に大きな衝撃を受けた。今まで部下に疑いの目を向け、いちいち監視していた自分とは何たる違い。それからはだんだんと仕事を任せられるようになった。しかし不振に陥っていた間に昇進で同期に抜き返されていた。
「仕事の成果は出ないわ、同期には抜かれるわ、仕事ばかりしているから彼氏はできないわ、酒量は増えるわで、人生のどん底で30歳を迎えていました(笑)」