「自分より劣っているはずの女に負けるのは悔しい」
男女雇用機会均等法の施行から30年以上が経ち、2016年は女性活躍推進法が施行されたというのに、いまも男尊女卑が目立つ職場はあります。
そうした職場に共通するのは「女性は結婚や出産・育児で辞めたり休んだりするから重要な仕事は任せられない」という意識です。たとえ能力が劣っていても“辞めない男性社員”“休まない男性社員”はげたを履かせて優遇されているのです。
しかし優れた経営者たちは、真面目で気づかいができて能力の高い女性を見逃しません。出産・育児に合わせて休暇をしっかりとり、短時間労働ができるように、制度を構築します。そのような組織では、男女がほぼ同じ条件で能力を競い合うことになり、性別によってげたを履かせることはありません。
ところが、問題は残ります。女性との競争に負けた男性はどのような態度に出るか。プライドが傷つき、かえって男尊女卑を強める恐れがあるのです。彼らの意識は「自分より劣っているはずの女に負けるのは悔しい」ですから、既得権益を奪われて、これまで以上に女性の足を引っ張る可能性があります。一部の男性たちは、そのようなプライドと見栄から抜け出すことができません。女性との競争に負けそうな男性たちは、相当にビビりはじめています。
男社会のナゼ?を解説しました。ふに落ちないことや違和感があるかもしれませんが、まずは落ち着いて、大局的に物事を捉えましょう。
少子化が進む日本において、「女性活躍」という社会や企業の要請がある。それはそれとして理解したうえで、同時に自分の幸せを追求していくことが重要です。誰かに扇動され、踊らされて働くのではなく、そこに自分の価値軸をしっかり入れていくこと。そして男社会というすぐには変えがたい現実を前に、男性にもっと女性のことを学んでもらう一方で、女性も男性の習慣や習性を理解してもらいたいと思います。
▼男性学からアドバイス
・冷静になって大局的な判断を
・社会的、歴史的背景を知ろう
・おじさんの大変さも知ろう
大正大学 准教授。1975年生まれ。社会学・男性学・キャリア教育論が主な研究分野。男性学の視点から男性の生き方の見直しをすすめ、多様な生き方を可能にする社会を提言する論客としてメディアでも活躍中。著書に、『〈40男〉はなぜ嫌われるか』(イースト新書)、『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)など。
構成=Top Communication 撮影=市来朋久