心を整えることが頭を整えることにもなる

【島田】私はこれまでずっと組織・人事の仕事をしてきました。悩みの相談に乗ったり課題解決のために人のニーズを知ることでその人のモチベーションが上がるサポートをすることが専門分野です。人間への興味、人を育むことへの関心が広がりNLP(Neuro Linguistic Programming)を知りました。マインドフルネスとの出合いはそのときでした。

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役 人事総務本部長 島田由香さん

NLPとは、思考のクセやパターンに気付き、それを書き換えて新しい思考や行動ができるようにするための学問。師匠が密教のお坊さんということもあり、NLPと仏教に触れるうちに、両者には共通点が多いことに気付きました。

誰しも、自分では気付いていない思考のクセがあります。そこへの効果的なアプローチがNLPで、自分に気付くための手段の1つとしてマインドフルネスがあったので、私のなかにすーっと入ってきました。

私がマインドフルネスをビジネスに取り入れているのは、効果を実感しているから。現代人は「忙しい」が口癖で、一瞬たりとも「いま、ここ」に立ち止まることはなく、次から次へと来るものをさばき、したことを後悔し、翌日のことを心配する。そんな毎日のなかで、たった数秒でも目を閉じて呼吸に集中する。それだけで体も表情もゆるみ、ワサワサした感覚がなくなるのです。

――島田さんは、どのように社内で広められたのですか?

【島田】まず社内のトレーニングに取り入れました。マインドフルネスと銘打って開催したこともあれば、あえて言わず「リーダーシップ研修です」と伝えて開催したことも(笑)。リーダーシップとはその人のあり方ですから、マインドフルネスのプログラムを体験すれば、リーダーシップも必ず磨かれます。心を整えることが頭を整えることにもなり、それがその人のパフォーマンスにも影響する。つまり、あり方を整えることがすべてです。その人がなぜ生きているのか、人生の目的は何か、そういうところまでつながっていく。だから、先ほど松山さんがおっしゃった、欲のためにするのではないというお話にはとても共感します。

【松山】本当にマインドフルな方は、良い感じに力が抜けていますね。

【島田】はい、思いきり楽しむというか、やり切っているというか。けれども無理せず、抗っていない。自分の体験も含めて、現代人は抗っている人が多いと思います。ところが流れに委ねると、必要なことが勝手に起きる。とくにここ数年、私自身がそれを感じています。無理して何かをしたり求めたりしなくても、必要なことは勝手に起こる、そんなイメージです。

【松山】本来、人にはそれぞれすべきことがあります。農業をしている人は畑を耕すとか、お坊さんならお勤めをするとか、その人の役割があります。それを一生懸命やっていれば、そのうちご縁はついてきます。変に色気を出さないほうがいい。

気合を入れて「マインドフルになるぞ!」と思うのは、それ自体がそもそも違う。そういったことが、いまのビジネスパーソンの方には欠けていることではないでしょうか。