いまはまだ作業員に「女の子が来た」と思われる
だが、通信建設業界の現場で働く女性はまだ少なく、現場の作業員は女性に監督されることに慣れていない者が多い。「女性がとう道に入ると神様が怒るから、よくないよ」と渋い顔をする古株の作業員もいた。
「そんなときは、『あっ、じゃあ私、いないほうがいいですかね?』と明るく返すと、『いやぁ、いてくれたほうがうれしいよ』と笑ってくれたりします。でも、慣れるまでは大変でした」
そんな彼女が心の支えにしているのは、同期の女性社員だ。
「同じ技術系の仕事なので、入社時の研修も一緒で、今でも2人でご飯を食べに行ってはいろんな話をしています。仕事の弱音を言い合える同性の同期が1人いるだけで、これほど心強い気持ちになれるとは思っていませんでした」
研修を終えた後の約1年間、石川さんは先輩社員と組み、さまざまな現場での仕事を経験した。とう道内での工事はもちろん、マンホールの撤去など、地上の現場にも何度も立ち合ってきた。
先輩社員から離れて、初めて1人で現場に出たのは2016年の6月。大井競馬場付近の地下トンネルに通じる管を撤去する工事だった。
「その日は緊張のあまり眠れず、誰もいない早朝に現場に行きました。1人で現場の準備をすべて確認しましたが、集合時間になるまで、不安で胸がいっぱいでした」
そう振り返って笑う彼女だが、入社3年目の現在は後輩に仕事を教える立場になった。女性技術者の採用を積極的に進める同社の施策もあり、近いうちに女性が部下になる可能性もあるだろう。
「いまはまだ『女の子が来た』と思われているけれど、早く『石川さんが来た』と信頼されるようになりたいです。後に続く後輩たちに、選択肢を増やしてあげられる存在になれたらいいですね」
撮影=市来朋久