小さな旅に出かけて感性に刺激を受けています

建築士
羽場友紀さんmoyadesign 共同主宰

 
東京理科大学大学院理工学研究科建築学専攻を修了。2005年から隈研吾建築都市設計事務所に所属。12年に退社後、平辻里佳氏とmoyadesignを立ち上げる。プロダクトから建築・ランドスケープのデザインまで手がける。(撮影協力/ダンデライオン・チョコレート ファクトリー&カフェ蔵前)

2016年2月、東京・蔵前にサンフランシスコ発のチョコレート専門店「ダンデライオン・チョコレート」が誕生。カカオ豆の選別からチョコレートになるまでの全工程を一貫した手作業でつくり出す、「ビーン・トゥ・バー・チョコレート」の火付け役となったショップだ。その店舗設計・建築を担当したのが、羽場友紀さん。築60年以上の倉庫をスタイリッシュな空間によみがえらせた。蔵前に続いてオープンした、鎌倉と伊勢両店の設計も手がけている。

「どの店舗も古い建物の魅力を生かし、梁(はり)や床など残せるものは残したつくりになっています。また、『ダンデライオン・チョコレート』は出店場所にも強いこだわりがあるので、その街との調和を意識してデザインしました。たとえば蔵前は、古くから職人さんたちが集まるクラフトの街。だから、家具や音響などは物づくりにこだわりのあるメーカーやつくり手とコラボしました」

空間と既存の建物を生かした、シンプルな設計を得意とする羽場さん。場所を変えて物事をじっくり考えたり、感性に刺激を与えたりするために、定期的に1泊2日程度の小さな旅に出るという。旅先でつい手を伸ばしてしまうのが、その土地でつくられた器や民芸品など。

「装飾としてのデザインよりも、機能性を求めた先にあるデザインが好き。あまり物を多く持たず、本当に良いものを長く使うようにしています」


Q 愛用の腕時計は?
A ノモス グラスヒュッテ

バウハウスデザインと呼ばれるシンプルで飽きのこない機能美が魅力。2年ほど前に夫からプレゼントされた。「ノモス グラスヒュッテでは、時計の心臓部であるムーブメントも自社製造。静謐(せいひつ)なデザインと物づくりに対する情熱や責任感の対照性が好きですね」

Q この1年で何に一番お金を使った?
A 自宅のリノベーション

築40年の低層ビンテージマンションを購入し、自らの設計でリノベーション。現在は自宅を実験の場にし、新たな空間の在り方を模索中。「最近はキッチンを一般の方々に開放してクッキングイベントを開催するなど、住まいを起点にした関わりを楽しんでいます」

 

撮影=花村謙太朗、強田美央