Case 4:関係を途切れさせない、ご縁をつなぐ一押し

▼「相手が主役」を徹底し、また会いたい営業になる

「お客さまが主役であると思えば、忙しい時間を使って検討してもらえたことに感謝の気持ちが生まれ、ご縁もつながっていきます」と山本さん。長い時間をかけて営業したのに……と、断られて悔しさを表に出す人は、「自分を基準にものを考えてしまっている売れない営業です」。

電話を置くときは必ず、「忙しいなか自分と話してくれたことに対する感謝を伝える」という所さん。「顔を合わせない分、お客さまがどういう方なのかを想像しながら、気持ちよく話し、気持ちよく終わるトークを心がけています」

たとえ契約に至らなくても、時期が変われば状況は変わる。樋口さんが商談を終えるときに実践しているのは、多忙な相手に都合の良い頃合いを聞き取ったうえで、「◯◯の頃にまたご連絡します」と、相手のストレスにならない大まかな時期を示して再コンタクトの了承をとること。「すべて自分がしてもらってうれしいかどうかを基準に考えます」。

すぐに出店はできないという相手でも、山本由さんは、「一度、店舗を見に来てください」と現場を案内する機会をつくり出す。「いきなり契約は難しい方も、『まずはポップアップから一緒にトライアルしませんか?』などとお声がけします。私が身につけているアクセサリー、これはすごくいいなと思ってアプローチしたとあるテナント企業のものなのですが、先方は当初迷われていたんです。それで三井不動産で社内販売をしたところとても好評で。それが先方のやる気につながって出店いただけました。商品に対する思いをお伝えして、手を替え品を替え(笑)、出店にこぎ着けた例ですね」

「お客さまは、自分の話をよく聞いてくれたり、覚えていてくれる営業を好きになるものです。例えば、雑談のなかで次の休暇に旅行に行くという話が出たら、別れ際に『お気をつけて行ってらっしゃいませ』と一言添えると、また会いたいと思ってもらえますよね。いいときも悪いときも、ご縁はつながっていくということを、トップ営業は絶対に忘れません」(山本さん)

三井不動産 商業施設本部 商業施設営業一部 営業グループ 主事 山本由佳子

2005年入社。三井不動産レジデンシャルで住宅開発事業、秘書部を経験した後、法人ソリューション部で3年間企業向け不動産コンサルティング営業に従事。その後米国の不動産会社で半年間インターンを経験。帰国後16年4月から現職。東京・日本橋を中心とした都心型商業施設のほか、ららぽーと各館のテナントリーシングを担当。

 

野村證券 渋谷支店 ファイナンシャル・コンサルティング課 課長代理 樋口加奈子

2006年入社。以来、渋谷支店で個人のお客さまを中心に、地域に密着した資産運用のアドバイスを行う。半年に1度、全国のセールスを対象に行われる成績優秀者の表彰を2度受ける。

 

WEIC SALES BASE事業部 所 剛

大学卒業後、IT系ベンチャーで10年間勤務した後、2016年にWEICに転職。前職で積んだ電話営業のスキルを活かし、WEICが提供する営業支援サービス「SALES BASE」事業部で、サービス利用企業のために、インサイドセールスを実施している。1日のコンタクト顧客数は約100件。

 

監修 プラウド 代表取締役社長 山本幸美

リクルート、インテリジェンスなどで営業として活躍。まったく売れなかった経験から独自のコミュニケーション術や思考法などを編み出し、営業成績全国4000人中1位や個人売り上げ3億円以上などを達成。マネジメントでも手腕を発揮し、2004年に営業研修やコンサルティングなどを手がけるプラウドを設立。

撮影=邑口京一郎