子育て期は力を付けられる時期

【中野】私も転職して最初、周りが自分で調査もできてパワポもかっこよくつくれて営業も講演もできますみたいな人たちで、自分も同じようになろうとしたんです。すると、できるようにならないといけないことが多すぎて、生産性がものすごく低い。それが、あるときメンバーの中に、デザインが得意でパワポをきれいにしてくれるとか、エクセルで「データいじるの大好き」という人がいることがわかって、そういう仕事を得意な人にお願いしはじめたんです。するとダイバーシティの効果で、チームとしてすごく生産性が上がる。もちろん、できればパワポもエクセルも自分で扱えるスキルがあったほうがいいとは思いますが、時間がない人にとっては、それぞれの専門性を生かしたほうが圧倒的に早いし価値が上げられるんですよね。

【篠田】自分が限られた時間でやって一番意味があることは何か、自然に考えるようになりますよね。子育て期は先を見通せなくても先々に向けて力を付けられる時期かも。

【中野】日本企業の総合職の「新卒で入ってジェネラリスト的に育てる」というのは、長期では効率が悪いし、育児・介護をしながら働く世代にはフィットしない。一方、完全にフリーランスで個人で仕事をするというのも非効率な面があるので、その間のまさにALLIANCE的な形態が、今求められているのではと思います。

中野円佳
ジャーナリスト。1984年生まれ。2007年東京大学教育学部卒、日本経済新聞社入社。14年、育休中に立命館大学大学院にて提出した修士論文を『「育休世代」のジレンマ』として出版。15年より企業変革パートナーのChangeWAVEに参画。東京大学大学院に通うかたわら、発信・研究などを手掛ける。
篠田真貴子
ほぼ日取締役CFO。1968年生まれ。91年慶應義塾大学経済学部卒、日本長期信用銀行(現新生銀行)入行。米ジョンズ・ホプキンス大学で国際関係論の修士学位号、ペンシルベニア大学ウォートン校で経営学修士(MBA)を取得。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ノバルティスファーマなどを経て08年東京糸井重里事務所(現ほぼ日)に入社、09年より現職。

撮影=岡村隆広