【中野】私もいま経済産業省の「雇用関係によらない働き方に関する研究会」の委員を務めていて、従来の雇用関係におさまらない人たちの議論をはじめたところで、とてもわかります。一方で7割の中でこのALLIANCE型のパーセンテージも小さいですよね?
【篠田】小さいです。でも名前が付いて認識されるだけで、特に若い方が職業選択をするときに、終身雇用か起業か、という両極端以外にも、こういう生き方もあることが見えるのと見えないのとでは心持ちが違うだろうとは思います。
もう、すでに変化は始まっている
【中野】キーになるのが、自分のやりたいことと会社の目指していることが一致するところを互いに探すという点ではないかと感じました。例えば篠田さんが、東京糸井重里事務所(現ほぼ日)がポーター賞を取る原動力になったというのも一つの事例ですよね。これができる人はほんの一部ではないでしょうか?
【篠田】それは変革型の話なんです。本の中では働く形として、ローテーション型、変革型、基盤型の3パターンを提示しています。本では変革型、つまり会社でリーダーシップをとって、会社の変革と本人のキャリアの両面で次のステージへの変革をもたらすという話に3分の2以上を割いています。でも、人数としても一人のキャリアの期間としても、ローテーション型、基盤型のほうが多い。例えば人生のある時期、運送業者のセールスドライバーをやろうという方だとか、コンビニに社員で入り、まず店舗をやって、その後店舗を統括するような仕事をするのはローテーション型だと思うんです。そこから基盤型になっていく人もいる。必ずしも「やりたいこと」のビジョンがなくても、この環境で働くのがうれしいという人にとって、その仲間たちを裏切りたくないとか、期待に応えたいというのが、日々の動機になる。そういうケースもALLIANCEの在り方の一つです。
【中野】本を読んだときのイメージより対象が広い話なのだと理解できました。働く個人は、どういう心づもりや戦略をもっていればいいでしょうか。
【篠田】心構えとしては、会社に従属するのではなくて、会社に対してフラットであること。会社を利用してやれという姿勢でもなく、もう辞めろと言われたら人生終わりになるような依存もしないということ。その姿勢が大事なんじゃないかなと。
【中野】とはいえ、フラットになるには交渉力やスキルも必要では?
【篠田】それはそうだと思います。変化を良しとして、受けて立とうと思えるかは人によるので。だからこそ、まずは会社側が、フラットな関係をつくろうとしないと、個人にはきつすぎると思います。会社側が、経営の戦略としてこういう形を取っておいたほうが、事業の変革とか環境変化に、より柔軟に対応できるというメリットがあるという大前提に立たないといけないと思います。歴史ある大企業が根幹から人事の考え方を変えるというのは難しいので、その中の新規事業などから、必然的に始まっていくのかなと思います。