自分がどうしたいかより相手が読みやすいか

手紙に限らず文章は、自分や自社がどうしたいかではなく、読む相手がどう思うかが大切です。僕は、読む相手が読みやすい文章が良い文章だと思っています。

小野さんの会社は、句読点を省くというルールがあるそうですが、読みにくく相手にストレスを与えますし、誤字とも受け取られかねません。

また、珍しい季語は一見、格好良くても、意味を理解して使っている方は少ないです。それより、オリジナルの季節感あふれる表現や文章を考えてはいかがでしょう。季語という枠から離れて、やわらかく考えてみてください。

自分の署名でのお礼状では、親しみを伝えつつも距離感を保つため「皆さま」や「学び」という言葉が有効です。お土産を渡されて「恐縮した」という表現では、相手は「なぜ?」と感じてしまいます。心遣いに感謝し、相手の配慮から学ぶことが大きかったことを伝えると、上下関係や距離感も同時に伝わります。

中島泰成
代筆屋、行政書士。小説『代筆屋』(辻仁成著)をきっかけに代筆業をはじめ、テレビ、新聞などで紹介。「告白」「復縁」「お礼」「謝罪」「遺言書」など、あらゆる分野の相談を受ける。著書に『プロの代筆屋による心を動かす魔法の文章術』。

構成=塩月由香