▼ファイナンシャルプランナー 植田一樹さんから
提言:一人一人が正しい金融知識を身に付けて、景気向上に尽力すべし

消費増税に関していろいろと議論されていますが、なぜ消費増税をするのでしょうか。

その理由は、少子高齢化によって膨れ上がる社会保障費の財源に充てるためです。日本は高齢化が進んでおり、2025年には国民の3分の1が65歳以上となる超高齢化社会を迎えます。そんな状態では勤労世代ばかり負担が大きくなるので、高齢者も含めた全国民が負担する消費税を社会保障の財源にするのがふさわしいとして消費増税を行うのです。つまり消費増税をすることは今後の世代の未来を守るためには必要だと言えます。

しかし消費増税には注意点もあります。特に気になるのは景気の悪化につながる可能性があること。総務省統計局のデータを基に計算してみると、2人以上世帯の消費支出は増税で月に約5000円、年間約6万円ほど負担が増えそうです。実質所得が増えないままでは負担だけが増して個人消費が落ち込み、間接効果で企業の売り上げが下がって法人税が減少し、消費税を増税したのに税収全体では減ってしまいました、なんてことになる可能性もあります。

こうなってはなんのために消費税率を上げるのかわからなくなります。

そのため消費増税だけでなく景気の向上も同時に必要であると思います。景気の向上は政治家や企業だけが考えればいいわけではありません。これまで日本では金融教育が行われなかったため、国が政策を行ってもほとんどの国民は動き方がわからず受け身の姿勢しか取れませんでした。しかしこれからは国民全員が正しい金融知識を身に付け、自ら考えて健全な消費や運用などを行えるようになることが重要です。環境が変わっていくことを嘆くのではなく、適応していけるよう変わることが大切で有意義だと思います。

佐藤留美=構成 市来朋久=撮影