働く女性たちは消費増税についてどう考えているのか。思うところを議論し合いました。

藤岡さん/フリーライター。30代既婚。雑誌やウェブなどで幅広く活躍中。
高井さん/IT系企業に勤務。30代既婚。将来は海外への移住も視野に入れ、ユニバーサルに通用するスキルを磨く。
住田さん/人材紹介会社でサイト記事を担当。20代独身。Iターン、Uターンをしたい人材と企業の支援をする。

※キャリア女性のための転職サイト「ビズリーチ・ウーマン」の協力を得て3人の方にご参加いただきました。

お金が必要な人と必要ない人の見極めを!

【高井】国が決めたことなら仕方がない気もしますが、増税分の使い道をきちんと精査してほしい。

【藤岡】軽減税率の実現性が気になります。私はやったほうがいい派。ヨーロッパでは、生きていくのに必要なパンなどの消費税率は低い。そして、買い物するときにみな、この税率について大変気にするんですね。すると、国民の政治についての意識も高まる。

【住田】私は軽減税率はやらなくていい派です。国会で何の税率を上げて、何を下げるだの、議論している時間がもったいない。議論すべきことはほかにあると思います。

――例えば何についてですか?

【住田】私は記者という仕事柄、地方都市によく行くのですが、中央との格差問題は深刻です。ですから、地方創生についての議論を深めてほしいです。

【藤岡】消費増税に話を戻すと、消費税は上がっても、給料は全然上がらないのが苦しい。結果として、暮らしはきつくなる一方です。

【住田】それは言えます。私は27歳ですが、予定ではとっくに500万円ためている計画でした(笑)。そのため、化粧品もちびちび使うなど節約しているのに、東京で一人暮らしだと、家賃とランチ代だけであっぷあっぷ。そのうえ、増税となると目もあてられません。

【藤岡】我々世代は、将来の年金も今のお年寄りが受けているような医療も期待できない。そもそも、この国の社会保障は極端にシニア世代に重点的に使われすぎている。保育園整備、児童手当など、現役世代への保障をもっと手厚くしてほしいですね。

【高井】私も、今の東京で子どもを産み、育てる気はしません。保育園が確保できるかも心配ですし、公立の小学校の教育も他の先進国と比べて優れているとは言い難い。タブレット端末を使った教育なども、他国と比べてまるで進んでおらず、英語教育なども見劣りする。

【藤岡】うちの主人は年収1000万円以上ですが、年収1000万円以上の人が日本の所得税の半分以上を支えているそうです。ですから主人は「やってらんないよ」なんて言っています。

【住田】一方で、貧困の連鎖など、格差は広がる一方……。私は、「同一労働同一賃金」の考え方を日本も取り入れたほうがいいと思うんです。同じ仕事でも、東京と地方では、賃金差がありすぎます。

【藤岡】でも、同一労働同一賃金を取り入れると、規定の給料を払えないとの理由でつぶれる会社が続出しませんか? もっとも、同一労働同一賃金を取り入れる北欧などは、それでつぶれる会社は必要ないという考え方のようですが。

【住田】そこなんですよね。かといって、地方に助成金をじゃぶじゃぶと流すことがいいことだとは思えませんし。

【藤岡】でも新しい産業やイノベーションが生まれやすいように、大学の研究開発費を増やすことは検討してほしい。

【高井】それでもやっぱり私は、日本の将来に正直、明るい希望を見いだせていないんです。

【住田】どういうことですか?

【高井】日本が、泥舟に見えるんですよね。高齢化で舟のこぎ手もいなくて、ズブズブ海に溶けていくようなイメージ。応急処置をしつつ、海の上を進んでいけるようにしないといけないと思いますが、それが無理なら、泥舟から脱出するのも手なのではと真剣に考えています。

【藤岡】つまり移住ですか?

【高井】そうですね。私も夫も英語ができますし、ユニバーサルに通用するスキルもあります。クラウドなどで仕事も見つけやすいため、仕事には困らない。ですので、「日本丸」ではない船に移ってしまおうかなあと。薄情ですが。

【藤岡】ユニバーサルに通用するスキルがあればそれも一つの選択肢ですよね。日本も増税するなら、そういう国際的に力のある人をつくる教育に、より資源を投下してほしいと思います。

▼「消費税」に関する要望書

「消費税」の10%への引き上げについて、下記により要望いたしますので、宜しくご配意賜りますよう、切にお願い申し上げます。

(1)軽減税率うんぬんの話に時間をかけるのではなく、日本の未来を考えてどこにお金を使うべきか国会で時間をかけて議論してください。
(2)消費税率を上げるのであれば、給料も上がるような経済政策を実施する必要があります。

以上 第14回 座談会参加者 一同

▼ファイナンシャルプランナー 植田一樹さんから
提言:一人一人が正しい金融知識を身に付けて、景気向上に尽力すべし

消費増税に関していろいろと議論されていますが、なぜ消費増税をするのでしょうか。

その理由は、少子高齢化によって膨れ上がる社会保障費の財源に充てるためです。日本は高齢化が進んでおり、2025年には国民の3分の1が65歳以上となる超高齢化社会を迎えます。そんな状態では勤労世代ばかり負担が大きくなるので、高齢者も含めた全国民が負担する消費税を社会保障の財源にするのがふさわしいとして消費増税を行うのです。つまり消費増税をすることは今後の世代の未来を守るためには必要だと言えます。

しかし消費増税には注意点もあります。特に気になるのは景気の悪化につながる可能性があること。総務省統計局のデータを基に計算してみると、2人以上世帯の消費支出は増税で月に約5000円、年間約6万円ほど負担が増えそうです。実質所得が増えないままでは負担だけが増して個人消費が落ち込み、間接効果で企業の売り上げが下がって法人税が減少し、消費税を増税したのに税収全体では減ってしまいました、なんてことになる可能性もあります。

こうなってはなんのために消費税率を上げるのかわからなくなります。

そのため消費増税だけでなく景気の向上も同時に必要であると思います。景気の向上は政治家や企業だけが考えればいいわけではありません。これまで日本では金融教育が行われなかったため、国が政策を行ってもほとんどの国民は動き方がわからず受け身の姿勢しか取れませんでした。しかしこれからは国民全員が正しい金融知識を身に付け、自ら考えて健全な消費や運用などを行えるようになることが重要です。環境が変わっていくことを嘆くのではなく、適応していけるよう変わることが大切で有意義だと思います。