アメリカでの課題はディスカバー・キヤノン
12年、田中さんは家族を連れてアメリカに赴任する。夫が休職してついてきてくれた。
キヤノンUSAの足達洋六会長(当時社長)から「遺伝子の研究をしている会社があるが、何とか事業にできないか」と言われ、やってみたいと思った。渡米して一番感じたのは「自分がキヤノンのビジネスモデルを知らない」こと。
「OEMは相手のビジネスモデルを前提に仕事をしています。“ディスカバー・キヤノン”が私の課題でした」
足達会長は、キヤノンの仕事がよくわかるように複写機関係の事務局の仕事も兼務させた。キヤノン再発見を続けながら新会社の立ち上げ準備を進める。14年末、「ちなみに、この会社の社長は誰ですか」と尋ねると足達会長から「あなただよ」。
「子会社の社長は親会社に説明責任を果たさなければいけませんから、それが一番できるのは確かに自分です。しっかりやらせていただこうと思いました。まずは遺伝子の検査をメインに据え、ゆくゆくは検体検査全般を手がけていきたいと考えています」
遺伝子の世界はまだ黎明(れいめい)期。そこから事業を立ち上げていく醍醐味(だいごみ)を感じている。
■Q&A
■好きなことば
一所懸命(「与えられたところでベストを尽くす」がモットー)
■趣味
テレビドラマ観賞、娘とジャニーズの番組を観賞
■ストレス発散
家事(洗濯などは手軽に達成感が味わえ、小さな幸せを感じられます)
■愛読書
『無人島に生きる十六人』須川邦彦著(新潮文庫)
市来朋久=撮影