相談を持ちかけるとき、企画を提案するとき、顧客との雑談――ビジネスの現場で欠かすことができないコトバでのやり取り。話し方一つで、説得力や信頼度はグンッとアップするのです! “話を聞く”立場の管理職たちに、よくある悩みをぶつけてみました。私たちに足りないのは、どんなこと?
【悩み相談】満足できる内容だと思いますが、提案がなかなか通りません ――36歳・公務員

仮説が入っているとOKしやすいです

答えてくれる人:ユー・エス・ジェイ オペレーション・エンターテイメント部パークオペレーショングループ次長 竹内昭久さん

2期連続で過去最多の入場者数を更新するユニバーサル・スタジオ・ジャパン(R)。33ものアトラクションの運営全般を統括しているのがパークオペレーショングループ次長、竹内昭久さんだ。配下には61人の部下と、1500人を超える“バリアブル”と呼ばれるアルバイトのクルーがいる。

「アトラクションは安全安心が第一なので、問題があれば事実を早急に報告するよう部下には指示しています」

座右の銘:人間力●人と接するサービス業に携わってきて思うのは、理屈だけで人は動かないということ。この人と一緒に働きたいと思ってもらえる人間力を備えるのが目標。

竹内さんに上がってくる連絡のほとんどは「意思決定」を仰ぐもの。判断しやすい順序に話の流れを整えるよう、常々部下に求めている。

「ストーリーがある提案は、通しやすいですね。簡単な例で言うと、(1)雲行きが怪しい→(2)雨が降るかもしれない→(3)傘を持っていく、といったように、(1)事実に基づく状況確認→(2)仮説→(3)アクション(提案)という流れになっているものです。特に仮説が大事で、これが抜けていたり、しっかりした内容になっていない場合が多いのです」

仮説を立てて説明する方法で、見事その提案が採用された女性社員のことを、竹内さんは印象深く覚えている。

「クルーを管理する女性スーパーバイザーが“クレーム研修”を受講したあと、この研修を現場のクルーたちにも受けさせたいという提案をしました。クレームの1次対応は現場のクルーがあたり、それでも解決できない場合にスーパーバイザーが出ていく手順になっています。であれば、まず第一線のクルーにこそ研修が必要だという理由です。ゲストの満足度を一番に考えればこその提案ですね」

彼女は、全クルーが研修を受けた場合、どれだけゲストへの対応力がよくなるか、会社の印象がよくなるかという仮説を詳細に話しただけでなく、かかるコストも提示。「お金がかかっても、今やっておけば雨にぬれることがない」。そう思った竹内さんは、提案を承諾。今年から実際に行われている。

「私たちは、提案の先に何が起こるかを考えて検討します。彼女の提案はそのイメージが明確で期待が持てるものだった。判断がしやすかったのです」

竹内昭久
ユー・エス・ジェイ オペレーション・エンターテイメント部パークオペレーショングループ次長。1974年生まれ。京都センチュリーホテルの飲食部門、ルイ・ヴィトン ジャパンの販売部門を経て、2001年入社。スタジオパスの販売、ゲスト対応、従業員のトレーニングなどの部署も統括する。

佐伯慎亮=撮影