大学院入院者が増えても就職先は増えない!

博士号取得者の貧困問題に関する全体的背景には、需給バランスの崩壊という構造がある。

1991年にはじまった「大学院重点化」という政策により、大学院生の総数はそれまでの約10万人から、現在では2.5倍にあたる25万人ほどにまで増産されている。これは、92年をピークに激減しはじめる18歳人口の穴を埋める形となり、大学入学者数の減少分が大学院入院者の増加により帳消しとなる珍現象までをもたらすほどのものとなった。

急増による弊害はひどく、理系の修士課程修了者を除いては、ほぼ就労先が見つからないという問題に直面することになった。技術職系以外は、あたかも「大学の新卒一括採用で十分」という企業の本音もちらつくなか、行き場を失った文系出身高学歴者たちが世にあふれだす。

ご承知のように、女子は昔から文系を選択する傾向が強い。社会や家族からの暗黙の期待により、学問の専攻分野がいわゆる「女子枠」に集約するようなチカラが働きやすいからだ。

そんななか、とりわけ学歴の頂点である博士号までをも取得してしまった女子の先行きは、辛酸をなめるものとなっている。そこに、もはや理系・文系の区別はない。

「リケジョ」などという言葉がつくられ、一見すると、女性研究者が華々しく研究機関等で活躍しているようにも映るが、実態の多くが任期付き非正規雇用のポスドクである。

文系がさらに悲惨なのは言うまでもない。理系と異なり、文系は就労先の幅がそもそも狭い。民間企業には、文系博士の需要は男性・女性を問わずほぼない。必然的に、大学に残り、専任教員を目指すこととなる。

《博士号を持つ女子でも仕事が見つからないのはなぜ?

▼大学院卒増加で需給バランスが崩壊!
【女性博士ゆえに直面する壁】
1. 上からの庇護を受けにくい立場にある
2. 女性教員(教授)が少なく発言力も学内政治力も弱い
3. 能力等についての根強い偏見の問題
4. 学問の専攻が社会的需要の乏しい「女子枠」に押し込められがち
5. 居場所を求めて自ら降りる