放送大学でカウンセリングの勉強をし、介護ステーションを立ち上げる仕事に就く。さらに職業訓練校でパソコンのスキルを身につけると、在宅でデータ作成の仕事を請け、大学で事務のバイトもこなす。その間もハローワークに通い、少しでもお金になるような仕事を探したが、
「どんなに働いても非正規なので時給が安く、いつ首を切られるかわからない。60代、70代になっても続けられる仕事を持たなければと考え、会社を起こそうと思ったんです」。
それでも何をしていいかわからなかったが、思いがけず起業の道が開けたのが無添加の天然化粧品だ。自身もアレルギー体質のため、子育て中に自然療法を学んだ立花さんは化粧水も手づくりしていた。原料に使う水の販売元に相談すると、そこの工場で製造してみたらと勧められる。アレルギーの子も使える化粧水を開発したいと、会社を設立したのは46歳のとき。一人で地道に販売しながら、エステの技術も身につけた。
化粧水は口コミで人気を集め、美容サロンもオープン。その頃、新たなパートナーとも再婚。立花さんは、これまでの道のりをこう振り返る。
「綱渡りみたいな人生だけど、私の強みは何も持たなかったこと。資格や知恵もなくて、私にできることを考えたら、枠を狭めたかもしれない。でも、知らないことでもできるんじゃないかと思えたら、とりあえず飛び込んでみる。ダメなら違うことを考えればいいと開き直ったら、意外に道は開けていくんですね」
離婚後もしばらくは苦しんだという。子どもの学校では「あの人は没落した」と見られ、昔の裕福な生活とはほど遠い。どんなに頑張っても報われないむなしさも味わったが、今はこの仕事が楽しいと心底思える。
「最大のピンチは自分のステージを上げるためにあると思うし、どん底こそが人生を変えるチャンス。幸せは、お金じゃ買えないんですよ」
子どもには「顔が変わった」と言われる。ものすごく笑うようになったし、そんなママはステキだと。
撮影=吉澤健太