仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、100冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、今回は「物の所有」に関するご相談です。

【今回のご相談】
結婚したばかりですが、物の所有について夫と価値観が合わないことに気がつきました。私はレンタル派で、夫は購入派です。私から見ると、一定期間しか使わない物を買ったり、ローンを組んで利息を払ったりすることがもったいなく感じます。逆に夫から見ると、手元に残らない物にお金を払うことが無駄に感じるのでしょう。今後、ベビー用品から車、家まで、いろいろな物の所有について考えなければなりません。もめないために、何かいい方法はないでしょうか? また、本田さん、河崎さんはレンタル派、購入派、どちらですか?
“ミニマリスト”という言葉や“持たない暮らし”が注目を集めています。しかし、個人ではなく家族全体で考えると、折り合いを付けることが難しいことも……(イラスト=伊野孝行)

モノの所有にエネルギーとコストがかかる今、ベストの方法は?

【河崎環さんの回答】

私は、レンタル派です。家族と一緒に海外2カ国の駐在帯同、その間、子供の学校の入学タイミングや住居手配のズレなどいろいろなことが重なって、結局6年間で7回の引っ越し作業を体験しました。引っ越しのたびに体のどこかを悪くするほどボロボロになった経験から得たのは、「いまの時代、モノを所有することほどエネルギーとコストのかかることはない」という教訓。特に、家具や本、雑貨など、物理的に存在するモノを移動するためのエネルギーコスト、それを保管するためのスペースを確保するための経済的コストなどには引っ越しのたびに頭を悩ませ、シンプルで身軽な人間にならないと、これからの“グローバル”な“ノマド”にはなれないと思いました。

そういう意味で、自分自身の流動性を高めるには、モノは所有しないという原則が一番、自分にとっても楽なのです。所有すると、その処分をするところまで自分が物理的・精神的に縛られるからです。我が家は書籍などの紙類、食器類を多く所有する家庭でしたが、本当に長く所有したい一部を除いた一切を海外で譲るなどして帰国しました。以来、活字類や音楽などの知的財産系は電子一辺倒。どうしても電子で手に入らない本などは、レンタルか、買ってもすぐに中古市場へ出します。服飾品もソフト系と同じ発想です。「いまの時代に一生モノという発想は要らない」と、古い物はどんどん処分し、新しい物を仕入れて、回転させます。ベビー用品や子供服に浪費してきた身から反省を込めて言わせていただくと、常に成長する子供の服やベビー用品は費用対効果の悪い最たるもの。しかし所有したい派の人が私の様子を見ると、「この人は頭がおかしい」と不安に感じるようです(笑)。

結局、所有派は安住・定住を望む精神の表れであり、レンタル派は移動・流動し続けたいと望む精神の表れなのだろうと思います。旦那さんは定住を望むタイプの方なのでしょう。もちろん所有の良さもあります。自分好みにカスタマイズやリノベーションが可能なのは、所有物ならではです。ですから、家や車などは、所有するのなら財産としての市場流動性を考えたいところですね。旦那さんとの折り合いの付け方ですが、物の性質によって発想を変え、カスタマイズを加えて快適性を上げるべき物については所有、そうでなければレンタルという原則はいかがでしょうか。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。