Twitterマーケティングで成功、しかし思わぬ苦労が

「豚組」は、中村さん自身が割引やイベント告知といったTwitterプロモーションに積極的に取り組んだおかげで、SNSを利用して成功した飲食店の先駆者として広く知られている。しかし中村さんには当時から常に「ITはそもそも飲食店にプラスになっているのか?」という問題意識と、「それでもテクノロジーで文化を変えられる」という信念の両方があった。

Twitterを活用して集客をしたのはいいが、結果、24時間いつでもTwitter経由で予約が入ってくるようになった。Twitterとは別に、もちろん通常の電話予約もやってくる。予約台帳は店に置かれているままだ。これを1人や2人できちんと管理することは非常に難しく、ミスも起こる。苦い思いが続いた。

「お店にいない時間帯に受けた予約は、予約台帳に書き込めない。これはすごいストレスでした。そうすると、ミスが起こるわけですよ。『接待で予約したのに席が空いてない』なんていう事態になる。そんなことがあったら、お客さんは二度と来ませんよね。信用は一瞬で失うものだと痛感しました」

リテラシーの低いほうに合わせないとシステムは成功しない

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トレタの利用画面。iPad一つあればどこでも予約管理ができる。トレーニング不要で、誰でも利用できる簡単さ、使いやすさを重視した。

もっとうまく予約管理のできるシステムができないものだろうか。2008年頃から開発会社に相談し、今の「トレタ」の形がスタートしたのが2013年だった。

「僕の執念の仕事です。一番大変だったのは、こういうツールは店で扱う人のリテラシーの低いほうへ合わせないと成功しないということです。トレーニングなしに誰にでも使えるものをどう実現するか。そこに苦心しました」

「トレタ」は予約管理だけでなく、顧客管理もできる。

「すごく接客が好きで入ってきた人でも、2回目に来たお客さんの顔を覚えられる店員は少ないと思います。でもシステム(トレタ)にはお客さんの名前が残りますから、昨日入ったバイト店員だって、その方が再訪だと分かれば『またお越しいただいて、ありがとうございます』と言える。機械が仕事してくれている分、人間はもっとクリエイティブな発想ができるんです」

本連載に登場していただいた「サーモン&トラウト」森枝幹さん(左)や、トリニティの星川哲視さん(右)も、トレタを導入しているユーザーの一人だ。

「ドタキャン」など、飲食店の悩みを解決する機能も

もう一つ、飲食店の大きな悩みが「お客のドタキャン」である。同じチェーン店内ならば、トレタを使ってドタキャン常習客も分かる。

「個人情報のことがありますから、違う店にそれを教えることはできませんが……。トレタはこれからも、BtoB、レストランのためのサービスに徹していきたい。店側がハッピーになれば、それがお客さんにも還元されていきますから」

飲食店を実際に経営し、繁盛させた手腕があってこその、積年の思いがこのシステムには込められている。

 
トレタの主要機能