起業のきっかけは、タイで請け負った事業立ち上げ

「ヨーロッパで仕事をしてみたいと出かけた旅の途中で、友人が住んでいたタイに立ち寄ったのがきっかけですね。これが運の尽きだった(笑)。彼女が働く会社を訪ねたところ、そこの日本人社長に『手織り草木染めの布のインテリア部門を作ってみないか』と誘われたんです。

写真上/手紡ぎして、草木染めされた糸は天日で乾かされる。写真下/昔ながらの手織りで織り上げられる布。自然の風合いを生かして作られる製品は一流ホテルやスパでも人気が高い。

タイで働くつもりは全くなかったので丁重にお断りして、予定通り北欧に行きましたが、11月だったのでとにかく寒い。ここに住むのは自分には絶対無理だと分かった(笑)。そこで、暑いタイに戻り、頂いた話を受けることにしました。今から15年前のことですね。仕事を辞め、海外へ目を向け始めていた当時、自分で何かを作って表現したいという気持ちはもともと強くあったと思います」

武蔵野美術大学で空間演出やデザインを学び、在学中にアルバイトをしていた麻関係の会社に勤め、仕入れから内装業務、販売までを担当していた嶋田さんにとって、日本人社長からのオファーは、そもそも心を動かすものだったのだろう。とはいえ、ヨーロッパ志向だった嶋田さんが、興味のなかった国で働くということは、そう簡単に決断できるものではなかったのではないだろうか。

しかし、嶋田さんはタイに渡る。タイであろうとどこの国であろうと、興味があろうとなかろうと、目の前に差し伸べられた手に関心が持てれば、まずは握ってみる。やってみる。行動してから考える。これは、起業家に共通する資質かもしれない。