ミスマッチ0を目指した採用改革
新卒採用がスタートした最初の年は内定辞退に加え離職率も高かったんです。当時は学生に気に入られないと名もない会社に志望してくれないのではないか、という思いが先行し「ベンチャーってやりたい事ができるよ」「稼げるよ」など良い面ばかりを伝えすぎていました。ただ実際のベンチャー企業は当社に限らず、裁量がある分仕事量は勿論多いですし、社内体制が整っていない面もすごく多い。そういうギャップが不安を煽り離職につながっていったんだと思います。
その年の経験や後悔から、内定辞退は勿論、離職をなくす“ミスマッチ0の採用”をトコトン追及するようになりました。例えば、説明会で仕事のきつさは勿論、恐らく他社では伝えないであろうリアルな面を伝えています。また、職場見学や社内の飲み会などで、通常の当社の姿を感じとってもらえるように、飛び込みでの参加もOKに。隠し立てすることなく当社の全てをありのままに見せています。
更に昨年からは、採用のときに使っていたエントリーシートや面接、グループワークも一切廃止し、一部を除き採用サイトの掲載までもやめてしまいました。というのも、面接の数時間で学生の傾向はわかるとしても本当に全てを判断するのは難しいと思うからです。学生側も取り繕ってきますしね。それなら、一緒にインターンとして働いたり、時には一緒に遊んだり、互いにトコトン向き合う時間に充てる方がよっぽど互いの理解が深まると思うんです。
新卒採用のサイトも、理由は勿論わかるのですが、良い面ばかりしか書かれないサイトも多く、学生をある意味、勘違いさせて興味を持たせてしまうことに。それは、学生を騙しているようにも感じられ、それなら一層のこと掲載をやめてしまおうと。なので、採用サイトを使用していた時には50人の参加だった説明会が、1人しかいない場合もあります(笑)。この採用難の時代に大丈夫? と言われることもありますが、それで良いと思っています。その分、1人に対して向き合う時間がたっぷりとれますから。
そんなエントリーシートも面接もない採用方法なので、学生たちには驚かれることが多いです。また、学生の中には、「こんなに素直に企業の方に話していいんですね」と泣き出す学生もいます。学生有利の就活の時代とはいえ、みんな就職活動するときは少しでも良くみせようと頑張っているんですよね。私たちとしては、人生に1度しかないファーストキャリアの場を選ぶ就活、そして自分を演技しながらでも頑張る学生に対して無責任な対応はできないと思っています。
構成=Top communication 撮影=向井 渉