1.経営者の資質

●そもそも経営者に“向き、不向き”ってあるんですか?

女性起業家のビジネスコンペで多くのライバルを退け、コンペファイナリストに輝いた女性起業家たちに共通点はあるのか? 起業を実現できる能力を栗原さんに聞いてみた。

「セミナーを開催したり、参加していますが、そこで積極的に名刺交換をし、参加者と交流しているのは女性。女性は共感能力が高く、ネットワーキングの中で共感できる仲間を見つけることが得意なようです。

でも、これは逆に女性の弱点でもあります。同質な人だけで集まり、自分にない能力を持つ者、自分と対立する意見を持つ者と付き合うのが苦手ということ。気の合う仲間とビジネスを行っている女性が多いのですが、小さなビジネスでも壁にぶつかります。人をうまく雇えないことで悩んでいる人もとても多い。

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【DATA.1】事業開始後、経年で見た黒字基調の割合を男女で比較【DATA.2】起業する事業の経験値と採算状況の関係【DATA.3】〈起業前〉の女性起業家の一番の課題は?【DATA.4】〈起業後〉は課題が「販売先の確保」に変化事業経営に行き詰まる?

しかし、多様な人材で構成されたチームは壁を破る突破口に。事業の成長に成功している女性起業家に共通しているのは、自分の苦手分野やキャリア・ノウハウ不足を補完する人材とうまくチームアップしていること。共同経営の形を選択する人もいます。また、これから起こす事業を経験した人のほうが圧倒的に黒字化できています(DATA.2)が、自分に経験がなくても経験者を取り込むことができれば同じ結果を得られるのでは。『販売先の確保が難しい』(DATA.4)、『人脈がない』と悩む人もいますが、それこそチームで克服することでは。

そして、仲間を集めるときにも必要なのが『ビジョンを明確にする』こと。『何を実現したいのか?』『どんな会社にしたいのか?』。シンプルな思いを明確にする。明確であれば人はついてくるものだし、ビジョンに共感できれば対立軸にある相手でもビジネスパートナーに引き入れることができます。コンペで見るのは事業の革新性と将来性。その核になるのもビジョン。そこがブレなければ、事業計画は変わってもいいんです。トライ&エラーで変わっていくのが当たり前。しかし、核となるビジョンがブレるようでは、事業計画自体迷走するだけです」

●女性起業家の特徴は?
女性ならではの得意分野と苦手分野を考察。得意分野は苦手分野と表裏一体。気の合う仲間と細々と仕事がしたいといっても、事業を続けていればいつかは壁にぶつかることも。そのとき、あなたはどうする?

得意:気の合う仲間を引きつけやすい
苦手:チームワークを図ること
女性の井戸端会議力は起業家としても大きな強み。情報の吸い上げやビジネスパートナーの発掘に役立つ。その一方、気の合う仲間ばかりが集まれば似た者同士の組織となり、自分が苦手とする分野を補完する人材が欠如し、チームワークが図れない。

得意:共感する人間を巻き込みやすい
苦手:対立する人材と協調できない
共感する人材ばかりが集まれば、意思決定は早くなるが、リスク管理が手薄になり、トラブルを未然に防ぐことができない。対立する人材を登用し、組織を形成していけるだけの許容度がなければ事業の将来性はないに等しい。

得意:一般消費者向けの商売〈B to C事業〉
苦手:事業者向けの商売〈B to B事業〉
女性の事業形態で多いのが一般消費者向けの商売。自分が欲しいサービスや自分が感じる不便さから起業を志す女性が多いので、この形態になりやすい。しかし、その事業が事業者向けとして発展活用できるかどうかを判断できないのは残念な点。

▼事業成長の限界点が低く可能性を模索できない
得意分野と苦手分野の特性を上手にコントロールできれば、事業規模の拡大も可能。それだけでなく、事業を続けていけばさまざまな困難に遭遇するが、問題に直面したときの突破口が見つかる可能性も高くなる。