恋愛要素以外も丹念に描く『海街diary』

「歳をとるにつれて、マンガの中の恋愛要素よりも、もっと大枠の人生全体の話について興味をひかれるようになりました。吉田秋生さんの『海街diary』や東村アキコさんの『かくかくしかじか』は、恋愛エピソードよりも、死や老い、自立について描いたパートの方がむしろ気になります。こうした、目を背けたくなるような部分も丹念に描いているマンガは、これからも読んでいきたいと思いますね」(31歳/webデザイナー)

『海街diary』吉田秋生(小学館)

映画版『海街diary』は、先日授賞式が行われた第39回日本アカデミー賞で、最優秀作品賞と監督賞を含む最多4冠を獲得。『かくかくしかじか』は2015年の第19回文化庁メディア芸術祭のマンガ部門で大賞を受賞しています。映画やアートなど、ジャンルを越えて受け入れられるような作品なのでしょう。人生を一面的ではなく、多面的に描くような深みがあり、それが人生経験を重ねてきた30代の女性の心にも強く刺さっているようです。

一周まわって…恋愛のときめきを学び直す『アオハライド』

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『アオハライド』咲坂伊緒(集英社)

「男兄弟の中で育ったので、スポーツ系などの少年マンガしか読んでこなかったのですが、最近、映画の原作ということで少女マンガ『アオハライド』『orangeーオレンジー』を読む機会が増えてきました。2年前に離婚して以来、恋愛することにおっくうになっていましたが、ときめきという感覚それ自体は、人を行動的にしたり、感情豊かにしたりといいものだなぁとしみじみ思い、今は少女マンガでその感情を学び直しています」(34歳/パート勤務)

いわゆる普通の恋愛モノではないタイプのマンガを挙げる人が目立ちました。しかし中には、人生の酸いも甘いも知って“一周まわった”状態で、あらためてロマンチックである意味古典的な少女マンガにハマったという声も。人生経験を積んだ上で、「こんなこと実際にはほとんどないよなぁ」とは思いつつも、自分以外の人を大切に思う気持ちを素直に表現する登場人物たちの様子に考えさせられるものは、今だからこそ多いかもしれませんね。

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マンガを単なるサブカルチャーと認識する時代は過ぎ、働く30代の女性たちもさまざまな感情についての理解に活用しているよう。次回は、さらにキャリアも人生経験も積んだ40代女性に「40歳を過ぎてからハマったマンガ作品」について聞いてみます。お楽しみに!

皆本 類
出版社勤務を経てフリーのライターに。広告案件や企業のオウンドメディアを中心に、女性向けコンテンツ作成を担当。おひとりさま向けウェブマガジンの編集のほか、猫やウェディングに関する雑誌に記事執筆も。

編集協力=プレスラボ