長い道のりを全力で泳ぎ切ることができるのは、折り返し地点があるから――村上春樹の短編「プールサイド」には、35歳は人生を乗り切るための折り返し地点だという話がでてきます。今回は、35歳を越えて新しいことに挑戦した女性に話を聞きました。

「35歳は人生の折り返し地点」……これは、1985年に刊行された村上春樹の短編集『回転木馬のデッド・ヒート』の中の「プールサイド」という作品に出てくる一節です。

長い距離を全力で泳ぎ切れるのは、その距離の折り返し地点が分かっていて、あともう半分、と分かるから。人生というプールの折り返し地点は35歳であり、「35歳になった春、彼は自分がすでに人生の折り返し点を曲がってしまったことを確認した」と気付くのです。「プールサイド」の主人公は、仕事にも家庭にも恵まれ、すべてを手にしたかのような完璧な環境。しかしその内実、これ以上なんのために生きていくべきか分からなくなり、途方に暮れてしまいます。

一方、2010年代の日本に生きる働く女性たちはどうでしょうか。2014年には女性の非正規雇用率が過去最高の56.7%(総務省統計局「労働力調査」より)を記録するなど、雇用や所得にもまだまだ不安が大きい状況です。また、2030年には50歳時点での未婚率を示す「生涯未婚率」が男性で3割近く、女性も2割強になるという予測も出るほど。結婚はもはや当たり前のことではなくなりつつあります。

そんな先行き不透明なこの時代、「これから何のために生きていくべきか」という抽象的な問いかけよりも、「明日どうやって生きていくべきか」という差し迫った悩みに苦しんでいる人も多いかもしれません。しかしそれでも35歳が人生の折り返し地点と仮定するのであれば、目先の不安に負けずに、将来を見据えて挑戦をし続けていきたいもの! そこで今回は、35歳を越えて新たなことに挑戦した経験のある、働く女性に話を聞いてみました。